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ジャスリード、旅に出る

本日2話目です。

 ベルギア氏族の長の家。森の中に建てられた氏族の中でも一番大きいその家に、先程ゴブリンキングを討ち取った少年……ジャスリードは居た。彼の目の前にいるのは氏族の長であり、昔は氏族一の戦士でもあった。その長が、ジャスリード達の持ち帰ってきた『戦利品』の中にあった1つの手紙を自分の前に置いていた。


「ジャスリードよ。これが何か分かるか」

「はい、長。手紙ですね」

「うむ。これは我らベルギア氏族に宛てたものだ。読んでみるといい」

「はい」


 この度、ラナシュ王国は増え続けるモンスター被害を減らすため、各国と共同歩調をとり『勇者制度』の設立を決定いたしました。各国の代表たる『勇者』とその仲間によってモンスター対策、ならびに人心の安寧を図る為の制度です。つきましては商人ギルドを通して各商会にも有望な人材の推薦が求められており、私達ゼルノ商会といたしましては、ベルギア氏族の戦士をぜひとも紹介させていただきたいと考えております。報酬といたしましては、今回の積み荷を前金とし、その他必要経費の負担などもさせていただきたく。ぜひとも検討をお願いいたします。


「……と書いてあります。どういう意味でしょうか」

「うむ。つまり我らのものをゴブリンどもが奪い、我らはそれを意図せず奪い返したというわけだな」


 菓子類などゴブリンが食べてしまったものも少なくはないだろうが、それでもかなりの物品を戦利品として手に入れている。それを商人に返さなくてもよいというのは、中々の朗報ではあった。


「良い知らせです。しかし、それだけではないようですが」

「この手紙が伝えたいのはつまり、援助するから勇者、あるいはその仲間としてモンスターを倒して回る……その候補となってほしいということのようだな」

「勇者。勇気ある者、ということでしょうか」

「あるいは勇気をもたらす者、かもしれんな。つまり一番強い者ということ……我らに話がきたのも納得だ」

「つまり、俺が此処に呼ばれたのは」

「そうだ。若くしてベルギア氏族一の戦士となったジャスリードよ。お前こそが我らの代表として相応しい」

「しかし、それならばベルギアの戦士だけで勇者と仲間とやらの枠を埋めてしまえばよいのでは?」


 ベルギアの戦士であれば当然のその疑問に、長は苦笑する。自分も若いころであれば同じことを言っただろうと自覚しているからだ。


「ジャスリードよ。世の中には若いお前が想像もせぬ理によって生まれる力がある。そして、それを極めんとする者もな。お前はそれを侮るか?」

「……いえ、ベルギアの戦士として恥じるべき発言でした」


 想像できぬ理。その言葉に、ジャスリードは素直に頭を下げる。鳥ですら空を飛ぶし、稲妻は木を撃てば火をもたらす事もある。商人の護衛に何もない場所から信じられない現象を起こす『魔法』なる力を使う者が混ざっていたのも知っている。ジャスリードは、自分に出来ないことを出来る者を甘く見る程傲慢ではなかった。


「分かればよい。つまり、そうした者で力を合わせ災厄に立ち向かえということだな」

「出来るでしょうか、私に。国を代表し、世界を駆ける者たち……きっと想像も出来ぬ者が集まるのでしょう? 天を駆け稲妻を降らせるような者が現れたならば、俺の刃が届くでしょうか」

「ならば常に考えよ。それがお前を高めるだろう」

「……承りました」

「この手紙は持って行け。地図もある……後で見方を教える故、まずは旅の準備を整えよ」

「はっ! このジャスリード、ベルギアの戦士として恥じぬ振る舞いを致しましょう!」


 そして、ジャスリードは旅に出る。行先はラナシュ王国の王都……ベルグリンである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 蛮族勇者のこれからに期待したいですね
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