第一章5 『朝は大変』
ああ。昨日はどうしたんだっけ。酒を飲んで、そのまま寝たのか?あまり記憶がない。体勢的に椅子に座って寝ているわけではなさそうだ。
そっか。ユウに運んでもらったのか。ベットで掛け布団に抱き付かれている。
……訂正。掛け布団ではなくユウだ。
「なんでこうなるんだよ」
自分は自分のベットの上で寝ていた。しかし、なぜユウが同じベットにいるのかはわからない。下の方を見ると、僕の右足はユウの白い太ももに拘束されている。
昔から寝ている時にユウの寝相が悪くて、よく被害を受けていた。
自分も色白なのはさておき、よく見ると本当に色白で男たちが放っておかないだろうに。
ユウの格好は、白いオーバーサイズのTシャツが少しはだけていて、おまけにノーブラ。ショートパンツ。
無防備にも程がある。
自分は抱え込まれるように寝ているが、ユウの立ち位置は普通、彼氏の立ち位置なのではないだろうか?自分の身長が低いことを呪う。同時に神様も。
ユウの鼻をつまむ。
「う、んん」
起きたようだ。しかし、目覚めは悪そう。
「おはよう」
「マイなんでここいるの」
「それを今に適した言葉に直すと『私なんでここにいるの』だね」
ユウが体を起こすと同時に僕の右足も解放された。
「ユウが運んでくれたんでしょ?ありがとう。なんでユウもこっちにいるかは、分からないけど」
「昨日、私が運んだんだっけ?覚えてないな。それに、私あっちで寝たはずなのに」
ユウが僕を巻き込みながら、倒れ込んでくる。ユウの腕と、太ももに挟まれ、身動きは取れない状態に。
さっきよりもひどい状態だ。
「ユウ。二度寝しないで」
「ごめんごめん」
起きてはいるようだ。
確かにユウが隣のベットで寝ていた痕跡がある。
ベット間の隙間が狭かったので、隙間に落ちずこっちに来てしまったのだろう。
「んんー」
ユウは考え込んで、何か思い出したように言った。
「……マイ。昨日どこまで覚えてる?」
昨日の覚えていること。酔いが回っていたので、記憶が曖昧だ。なんか、ユウにとろけたように、名前を呼ばれた気がしなくもない。
「昨日はロリコンの王様の話と……武器の錬成だっけ?そこまでしか覚えてない。何かあったっけ」
「良かった。思い出さなくていいから」
早口に言われてしまった。
「ご飯食べに行こう」
「行動が早くていいことだ。僕は二度寝をしたいから、10分ほど」
言葉を遮られる。
「朝ごはん」
「普段食べないのに、そんな食べられないよ」
朝ごはんは基本的に食べない。僕もユウも。
そんなだから小さいんだよと言われるだろうことは、一度忘れておこう。
「まあ、2人で分ければいんじゃない?」
「そっか」
一応確認だが、僕が神を呪っているのは、身長じゃない。この顔と手足だ。
一度食堂に行き、朝食をとって部屋に戻ってくる。
「美味しかった。思ったよりも腹に入ったよ」
「マイと半分にしなかったら、食べきれなかったけどね。でも、朝からフレンチトーストなんて、こういうところじゃないと食べれないね」
「ちゃんと食堂に行ってよかった」
「二度寝しないでよかったね」
別に二度寝しても間に合うことは間に合うので、それに関してはどうでもいいと思うが。
顔を洗って、服を着替える。と言っても、しっかりとした冒険者のような鎧などは重くて着れないので、普通の服を着る。
そして、魔道具であるネックレスを三個と、右腕に二つの金属製のブレスレットをつけた。このブレスレットも魔道具だ。
「よし準備できた。ユウは?」
「私はあと、サラシつけるだけだから待ってて」
サラシをつけるのは、普段着の時だけと言っていたはずだ。
「鎧つけんじゃないの?」
一応謁見に行くので、鎧を着るのかと思ったが、普通の普段着を着ていた。
「だってほら。装備は錬成に出すから」
ズボンはショートパンツのまま、上はローブみたいだが、丈の短く、長袖のオーバサイズのもの。
確か、パーカーとかいうやつだった気がする。よくわからない形の服なのだが、動きやすいのだとか。
その白い手足が焼けてしまうのではないだろうか、と思ったが、故郷の郊外で遊んでいた時は、全く日焼けをしていなかった。大丈夫だろう。
ナンパだけは心配か?
「ああ。そういうことね」
それならもうすぐに出れるのだろう。2日分宿を取っておいたので、荷物は置いて行く。
腕の魔道具であるブレスレットを外して、手の中で転がす。
面白くない。
「あれ?見たりしないの?」
「何を?」
「私、今上裸」
こういう時は無視。そう、無視に限る。
「ちょっ。何か言ってよ恥ずかしい」
「今上裸って言われてなんていえばいいの」
「私は、思いつかない」
「そういうこと」
でも、少しは気になったりしないの?とかって言ってるけれど、無視。
そんな物、魔法の透視で見ようと思えば見れる。最も、興味ないので、そんな使い方したことないが。
「はぁ〜。マイ。行こうか」
ため息を一つおいてから言った。
「何にそんなに疲れてんの?」
「色々あってさ」
「さいですか。こっちも、誘われてんのか、誘われてないのかわからんこと言われて、疲れました」
「それは奇遇だねマイ。私も」
「……僕、なにもしてなくない?」
ユウと目を合わせる。これ以上話をしても、たどり着くところはなさそうだ。
鎧の入った袋だけを持って、部屋を出た。
「鎧は全部手で持っていくんでしょ。何か持とうか」
「大丈夫」
ユウは僕の歩幅に合った速さで歩いていく。自分も急いでローブを被ってユウの後について行った。
「ユウってさりげなく……」
歩く速さとか思いやれるよね。と言いかける。
「なんでもない」
「なによ。気になる」
カウンターに寄って、鍵を預ける。
「少し出かけてきます。夕方までには戻るので」
「はい。分かりました。姉妹、仲が良くていいですね」
うん。見過ごせないな。
「そうでしょ?可愛いでしょ?自慢の妹なんです」
僕の頭を撫でまわし、しまいには抱きついて言う。
少し引かれているように見えなくもない。
先にお前を粉砕してやろうか。顔に力が入るが、死体処理をするスタッフさんのことを考えて自制。
「あ、はい。行ってらっしゃいませ」
やっぱ引かれてんじゃん。
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