第一章4 『初めての夜』
食堂から帰ってきて、ベットに寝っ転がる。疲れたからこのまま寝てしまおうか。
「マイ。何する?せっかく女の子と一緒の部屋にいるんだよ?」
「女同士は興味なかったんじゃないの?」
ユウの言っていることは間違い無いのだが、別にこれといってすることはない。
ただ体を休めるために部屋を取ったが、部屋がなく一緒の部屋になっただけだ。
「別に何もしないよ。寝る」
ユウに背を向けて目を瞑る。
「釣れないな。初夜なんだからなんかしようよ」
「誤解を生みそうだからやめようね」
「はい」
もう寝るか寝ないか、すぐにそんな感じで意識が揺らいできた。
「グフッ⁉︎」
口から変な声が漏れた。
「でもさ、久しぶりに一緒の部屋で寝るんだから何かしようよ。昔、いろんなことしたでしょ?」
ユウが上に乗っかってきた。僕の細い体では折れてしまう可能性があるのに。
「あ、あの……」
重いと言うのは失礼か。どうにかどいてもらいたい。そして寝たい。
「酔ってるよね?」
「シラフ。シラフ。お酒なんて飲んでません」
食堂であんなに飲んでいたくせに、よく言えるよ。と言いたいところだ。
「何か一緒にするって言うまでは離れない」
「分かった。酒盛りでもしよう。昔やったように」
昔はユウの親のお酒を勝手に持ち出してよく飲んでいた。高価で体に悪いから、と言って僕たちは飲ませてもらえていなかったため、僕らは隠れて飲んでいた。
ちょうどその頃に国の法律で、お酒は15歳以上と定められた。
「よし!私はグラスとか用意しとくから買ってきて」
そう言ってユウは僕から離れた。
「分かった。ユウはビールでいいの?」
「いいよ」
宿の売店で棚の上を物色する。
ユウの飲みそうな、ビール瓶2本と自分用のフルーツ系の酒を取り出して会計。
「すみません。15歳未満のお客様にアルコール類をお売りできません」
「……はい」
取り出した商品を棚に戻す。
「お?マイさん。なんか買い物したんですか」
売店の外に出たら、ちょうど食堂から帰ってきた狩人さんにあった。
「買い物したかったんですけど」
「年齢制限とか?」
「その通りです」
鈍感のくせして、どこか鋭いのがムカつく。
「俺、部屋こっちなので」
「あ、はい」
「あった?……手ぶらじゃん。お金忘れたの?」
「15歳未満のお客様にはアルコール類をお売りできないとのことです」
ユウは一瞬きょとんとして、瞬きを2回。
「は、はははは。いや。ごめん。ほんとごめん。そこまで考えてなかった」
「そこまで考えてたら逆に怒ってるよ」
私が買ってくるからと言って部屋を出て行った。僕はおとなしく座っていることにする。
ユウはすぐに戻ってきた。
「こんなんでいい?」
ちょうど買おうと思っていたものと、ワインを一本買ってきていた。
「そう。それを買おうと思ったんだよ」
「マイならこれ買ってきそうだからね」
グラスに買ってきてくれた物を注いで、グラス同士をぶつける。
「私たちの旅に乾杯」
「なんで今更少し遅い気がするけど」
旅に出てから5日目だ。少し遅すぎるのではないか?
「やってなかったからね」
あまり気にしないで半分くらいまで飲む。ユウは一瞬で一杯を飲み干した。
次第に酔いが回ってきて、なんだかんだで明日の謁見の話になった。
「もう言ったけど、明日の王様かなりのロリコンらしいよ。結構よろしくないこともやってるみたい。もしどっか変なところ触られたりしたらどうする?」
その時はその時なので、全く考えていなかった。そもそも考える方がおかしい。少し考えて思ったことを言ってみる。
「国家予算3年分でも請求しよっかな」
「いい案だね。と言うか私の可愛い賢者にそんなことするやつは切り伏せる」
可愛いとはなんだ。普段そんなこと言わないため、ユウは相当酔いが回っていようだ。
「王様を切り伏せたら問答無用で死刑だろうね。うまくいけば旅の路銀をがっぽり稼げるからやめよう」
「どう稼ぐの?」
「謝礼金とか」
もし、そういうことになったらしっかり演技してやろうと決心した。こんな変なことで決心しているところを見ると、自分もかなり酔いが回っているのだろう。
「そっか」
それでも嫌だけどな。とユウは言った。
ユウがお酒を飲むスピードがいつもより早い気がする。すでに食堂で二杯ほど飲んでいるため、何杯飲んだかとかわからなくなってしまっているのだろうか。
自分の飲んだ量は覚えている。グラス三杯?四杯?やっぱり覚えていない。
「あと、この街って防具が名産らしくて、特殊効果付きのものとか売ってるらしいよ。だから、謁見の間に錬金術師とかにお願いして装備を整えよ」
「ユウはいつもそんな情報どこから得てるの」
これまで僕らのいた村でも、ユウは情報を得るのが早いため、大きな情報網を作っているのかと思っていたが違うということがわかった。
「いろんな人が話してたよ。聞き覚えない?」
いろんな人というと、晩飯を食べていた時の周りの人々だろうか。
「僕は全く周りに興味なかったから聞いていなかったよ」
「それは私にしか興味がないからって意味?」
「ユウはすごいって意味」
「意味がわからない」
「意味がないことを言ったんだから深掘りしないで」
防具の錬金。僕にはあまり関係がないことだ。明日はそこに寄ってから、挨拶に行くという感じになるのだろう。時間的にも多分、ちょうど良いはずだ。
ほとんどの酒瓶がからになって、自分のグラスに入っているのも一口だけになった。少し前からずっと頭がボーッとしている。
「まーい。私さ」
話ぶりからかなり酔っていることがわかる。自分の意識もだんだん朧げになってきた。ユウに迷惑をかけないように、落ちる前にベットに入ろう。
「マイのこと可愛いと思うよ」
いきなりなんだよと思ったが、その感情は次のユウの言葉によって消え失せた。
「マイは自分の外見、あまり好きじゃないんだろうけど、私はマイの小さくて、コロコロしてて、そういうところ可愛いなと思うし、別にからかってるわけじゃないよ。私の本音だよ」
僕は何も言えない。嬉しいとも言えないが、自分の何かを否定されているような感じがない。
「私みたいに自分が嫌なんて思わないで、自分を好きになりな。なんていうと、お姉さん目線になってるね。うまくまとまってないけど、言いたかったことは……」
猛烈な睡魔が襲ってきた。ユウはまだ話している。しかし、ほとんど頭の中に入ってこない。
「私……マイの事……す……」
そこで意識が飛んだ。
結局、ユウが僕をベットまで運んでくれるのだろう。
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