漫才のネタをシリアスに書いてみたら笑えないんじゃないか説
もしも漫才のネタがシリアスに(文学的に)書かれてたら笑えるのか、という検証です。
プロの漫才師さんのネタをパクるわけにもいかないので、漫才ネタはオリジナルです。ネタ自体が笑えなかったら本当にすいません。
相沢が「どうも」と言うと、深津が「どうも」と言った。
二人は高校時代からの友人である。
お互い大学を卒業し、社会人になったあともたまにこうして公園のベンチで顔を合わせる。
それがまた居心地のいい空間であり、日ごろのストレス発散の憩いの場でもあった。
公園のベンチで静かに腰をおろす二人。
特に何をするでもなく、ボーっと空を眺めていると、不意に相沢が声をかけてきた。
「なあ深津」
「ん?」
「ちょっと聞きたいんだが、お前ゲームとかするか?」
神妙な面持ちで聞いて来る相沢に、深津は少し怪訝な表情を見せながらも答えた。
「ゲーム? 頻繁にはやらないかなあ。まあ人並みかな」
深津の言う「人並み」とは、1日3時間である。
一般的にはかなりのゲーマーなのだが、深津にとってはそれが普通だと思っている。
しかしそこまで言う必要もないため、深津は「人並み」と無難に答えた。
相沢は「人並みかぁ」と少し残念そうにしながらも尋ねた。
「もしわかったらでいいんだけどさ、昔やって大ハマりしたゲームのタイトルを知ってたら教えて欲しいんだよ」
「昔やって大ハマりしたゲーム?」
「そう。タイトルが全然思い出せなくてな」
哀愁漂うその表情に、深津は胸を打たれた。
こんな顔をする相沢を見るのは久しぶりだ。
深津は「ふむ」と一拍置いてから尋ねた。
「どんなゲームだ?」
「うっすらとしか覚えてないんだけど、赤い服着たおじさんがジャンプして敵を踏んづけるゲーム」
「……それ、オリマじゃないか?」
オリマ。
数十年前に発売された横スクロールのアクションゲームで、家庭用ゲーム機を普及させた金字塔とも言われている伝説のゲームである。
数十年たった今でも、続々とシリーズものが出ており、その人気は衰えることを知らない。
しかしそんな深津の言葉に相沢は首を振った。
「いや、違うんだ。オレもオリマかなとも思ったんだけどタイトルがもっと長かったんだよ」
「オリマじゃないのか」
赤い服着たおじさんがジャンプして敵を踏んづけるゲーム。
オリマじゃないとしたらなんだろうか。
深津は腕を組んで考え込んだ。
「じゃあわからないな。他にどんな特徴があるんだ?」
「キノコを取ると大きくなる」
「……オリマじゃないか?」
どう考えてもオリマである。
キノコを取ると大きくなるのはオリマの特徴だ。
しかし相沢は「違う」と即答した。
「だからオリマじゃないんだよ。タイトル、そんなに短くなかったし」
頑なに否定する相沢。
深津はいよいよもって考え込んだ。
「オリマだと思うんだがなぁ。他にどんな特徴があるんだ?」
「フラワー取ると火の球投げる」
「……オリマだろ」
「緑色の服着た弟がいた」
「……オリマだろ」
それはもうオリマ以外考えられなかった。
しかし相沢は言う。
「だから違うんだって! 何度も言わすなよ」
相沢は段々とイライラしてきた。
オリマという線はすでに考えたのだ。しかし、昔の記憶をたどるとどうしてもオリマではない。
だからこそ、深津に相談しているのである。
声を荒げたあと相沢はハッとして謝った。
「ご、ごめん。相談に乗ってもらってるのに」
「いや、別にいいよ」
「でもやっぱりわからないよな。ごめんな、変な事聞いて。忘れてくれ」
あきらめた顔をする相沢に、深津は「いやいや」と待ったをかけた。
「あきらめるなよ! あきらめたらそこで試合終了だぞ?」
「別に試合をしてるわけじゃないんだけど……。でももうお手上げだろ?」
「お手上げなもんか。逆にオレのほうが気になってきた。こうなったらオレも真剣に考える。オレの記憶をフル回転して意地でも探し出してやる」
「いいのか?」
「オレとお前の仲じゃないか」
深津の言葉に相沢は心の中で深く感謝した。
人情にあついのが深津である。
だからこそ、こうして一緒にいられるのだ。
「改めて聞くけどそのゲーム、他にどんな特徴があるんだ?」
「土管の中に入ったり出たりしてたな」
「……オリマだろ」
改めて聞いても結論は変わらなかった。
深津の中で、もしかしたら相沢は他のゲームと混同しているのではないかと疑い始めていた。
「オリマじゃなかったらパクリだろ、そのゲーム」
「でもめっちゃ人気あってアメリカで映画化もされてたぞ?」
「オリマだよ」
オリマは海外でも大人気で、実写映画化もされるほどだ。残念ながら興行収入は不振だったようだが。
「だーかーらー、違うんだって」
意地でも探すと言っておきながら、もはやオリマ以外考えられない深津。
ここはゲームの特徴よりもタイトルのほうで何か思い出せないか期待するしかない。
「タイトルのほうでなにか思い出せないか?」
「タイトルのほうで?」
「ゲームの特徴だけ聞くとどうしてもオリマに引っ張られるからな」
「タイトル、タイトル……。そういえばタイトルの頭にスーパーってついてた」
「スーパーオリマだよ」
前進したのか後退したのか、深津の中でのオリマ説がさらに増しただけだった。
「いやいや、違う! もっと長かった! スーパーオリマじゃない!」
頑なに否定する相沢。
深津は「はあ」とため息をついた。
「タイトルの頭にスーパーがついてて赤い服着たおじさんが土管に出たり入ったりして敵を踏んづけるゲームなんてスーパーオリマだろ」
「だから違うんだって!」
こぶしを握り締めて全否定する相沢に、深津は「わかったわかった」と手で制した。
「他にはどんな特徴があるんだ?」
「敵のラスボスが亀みたいなヤツで火噴いてた」
「……スーパーオリマだよ」
それはまさにオリマの宿敵パックしかいない。
もはや相沢も「違う」とは言わなくなった。
「そういえばスーオリって略されてたな」
「答え出てんじゃん。スーパーオリマだよ」
むう、と唸る相沢。
確かにスーパーオリマならスーオリと略されないこともない。
しかしそんなに短いタイトルではなかったことは確かだ。
相沢は悩みに悩み、ポンと手を打った。
「そうだ! そう言えばなんとかブラザーズって言ってた気がする!」
「スーパーオリマブラザーズだな」
その瞬間、相沢の顔がパッと花開いた。
「そ、それだー! スーパーオリマブラザーズだ!」
まるですべての問題が一気に解決したかのような爽やかな笑顔。
そう、相沢が探し求めていたのは「スーパーオリマブラザーズ」だったのだ。
確かにオリマではなかった。
オリマではなかったが、深津はなんだか釈然としなかった。
「いや、オリマの段階で気づけよ」
「あははは、ごめんごめん。なんか長いタイトルだったなーと思ってさ」
こういう天然なところが相沢の欠点でもあり可愛いところでもある。
深津はそんな相沢を見てフッと笑った。
「まあ、オリマではなかったからな」
「いやー、よかったよかった。解決したわ。ところで何の話をしようとしてたんだっけ?」
「知るか! もういいわ」
そう言って二人は別れて行った。
季節は春。
二人の友情はまだまだ続く。
~元ネタ(セリフが若干違います)~
「「どうもー」」
「突然だけどさ、深津ってゲームとかする?」
「ゲーム? 頻繁にはやらないかなあ。まあ人並みかな」
「人並みかぁ。もしわかったらでいいんだけどさ、昔やって大ハマりしたゲームのタイトルを知ってたら教えて欲しいんだよ」
「昔やって大ハマりしたゲーム?」
「そう。全然思い出せなくてな」
「どんなゲーム?」
「おっさんがジャンプして敵を踏んづけるゲーム」
「オリマじゃね?」
「違う違う。オレもオリマかなーとも思ったんだけどさ、タイトルがもっと長かったんだよ」
「じゃあわからないなー。他にどんな特徴あるんだ?」
「キノコとると大きくなる」
「オリマじゃね?」
「だからオリマじゃないんだって! タイトル、そんなに短くなかったもん」
「じゃあわからないなー。他にはどんな特徴あるんだ?」
「赤い服着たおじさんがハイテンションで飛び跳ねてる」
「オリマじゃね?」
「だから違うんだよ! 何度も言わすなよ」
「オリマ以外考えられないんだけどな。他にどんな特徴あるんだ?」
「フラワー取ると火の球投げる」
「オリマだよ」
「緑の服着た弟がいる」
「オリマだよ」
「だから違うって言ってるだろ! 何度も言わすなよ!」
「オリマじゃなかったらパクリじゃん、そのゲーム」
「でもめっちゃ人気あってアメリカで映画化もされてたぞ」
「オリマだよ」
「だーかーらー、違うんだって」
「他に特徴は?」
「そういえばタイトルの頭にスーパーってついてた」
「スーパーオリマだよ」
「いやいや、違う! もっと長かった! スーパーオリマじゃない」
「タイトルの頭にスーパーがついた赤い服着たおじさんがハイテンションで飛び跳ねてるゲームなんてスーパーオリマだろ」
「あ、他にも土管に入ったり出たりしてた」
「スーパーオリマだよ」
「敵のラスボスが亀みたいなヤツで火噴いてた」
「スーパーオリマだよ」
「スーオリって略されてたな」
「答え出てんじゃん。スーパーオリマだよ」
「だからもっと長いタイトルなんだって!」
「もっと長いタイトルってなんだよ」
「なんとかブラザーズって言ってた気がする」
「スーパーオリマブラザーズだな」
「ああ、それだ! スーパーオリマブラザーズだ!」
「オリマの段階で気づけよ」
「ところで何の話をしようとしてたんだっけ?」
「知るか! もういいわ」
「「ありがとうございました」」
お読みいただきありがとうございました。
説立証……たぶん!(笑)
ネタ自体で笑えなかったら本当にすいません。