実の兄に殺され、追放された元公爵令嬢の成れの果てに転生したので手遅れをはねかえすために輪廻屋を開く。

　輪廻屋……人間やそれに近い生き物の死体を別な生き物に輪廻させる商売。高額な報酬さえ払えば当人そのものへ生き返るのも可能。

　転生先でそんな商売を思いついたリジッタ、『生前』は中倉利津子。彼女は本来、十七歳の女子高校生で薄い本を作ったり死にまつわる真面目な学術書を読むのが趣味だった。利津子は両親を早くに失い、兄の孝とつつましやかに生きてきたはずだった。

　ある日、利津子が目を覚ますと目の前に悪魔がたっていた。驚く間もなく悪魔から伝えられた事実、それは、質素な生活に耐えられなくなった孝が悪魔と契約して利津子を毒殺したという。

　悪魔のもたらした選択肢から、利津子は敢えてチートなしの異世界転生を決断した。一定の金額を貯めて悪魔に払えば記憶を保ったうえで元の世界に戻れるからだ。

　平凡な商売では中々らちが開かないと踏んだリジッタは、死者を様々な生き物にさせる『輪廻』を請け負う仕事を思いついた。

　しかし、実業化には様々な試練を乗りこえねばならない。まずは仲間だ。

　営業と広報に長けた俺っ娘のミガン、無口だが腕のたつ用心棒の青年クラム、猫系獣人の男ニャン、そして……謎めいた仮面の男にして呪い師兼助言役のヌボ。

　一クセも二クセもある彼らは、コエモという男が率いる隊商のメンバーだった。病死したコエモの遺言で隊商を引き継いだリジッタは、コエモの葬儀を通じて新リーダーとして認められた。

　だが、リジッタには仲間にいえない秘密があった。コエモが最期に語ったところによると、リジッタは国王に謀反をたくらんで滅ぼされたジージェン公爵家の生き残りであった。リジッタは商人としての成功をめざしつつ自分の出生を隠し続けねばならない。

　新しく生まれ変わった隊商に託宣を得るべく手近なほこらを目指したリジッタ達は、そこで若い女性の死体を見つけた。

　隊商として初の輪廻が、その死体に対して実験的におこなわれた。