76 義姉さん?
「このクッキーとっても美味しい」
フェリクス様はご機嫌で私のクッキーを頬張っている。
「良かったです。また法務室にも差し入れしますね」
「本当?嬉しいなぁ、楽しみ」
「そんなことしなくていい!勿体無いからお前は食うな、俺が全部食べる」
男兄弟ってこんな感じなのかな?デーヴィ様もフェリクス様の前では子どもっぽいようだ。
「ふふ、ご実家のデーヴィ様は私の前とは随分違うのですね」
それを聞いて、彼はハッと今の状態に気が付き青ざめている。
「どうせ兄上は義姉さんの前では大人ぶって格好つけてんでしょ?」
フェリクス様は馬鹿にしたようにフンっと鼻で笑っている。
「煩いな、当たり前だろ。ミミに嫌われたくないんだから」
「私はどちらのデーヴィ様も好きですよ。今の貴方も可愛くて愛おしいです」
ニコニコと素直に思ったことを伝えたところ、デーヴィ様は真っ赤になり机に顔を真正面からガンっとぶつけた。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫……ちょっと刺激が強すぎただけ」
刺激とは何のことだろう?よくわからず首をかしげる。
「これは……兄上、義姉さんの可愛さ半端ないね。無自覚なところがまたグッとくるってゆうか」
「だろ?でもお前には絶対やらん」
♢♢♢
「その……できれば義姉と呼ぶのはやめていただけませんか?フェリクス様の方が年上ですので」
「そうだよな、ごめん。俺がちゃんとこいつに言うべきだった。フェリクス、お前はミシェルさんと名前で呼べ」
「やだよ。仲良くなったのにずっとそんな堅苦しい呼び方」
「もちろん、呼び捨てで構いませんわ」
「だめ!絶対呼び捨てなどだめだ!」
デーヴィ様は呼び捨てを断固拒否している。でも年上の方だし……
「じゃあミミちゃんって呼ぶね」
「ミミと呼べるのは夫になる俺だけだ!」
デーヴィ様は呼び方にこだわるようだ。
「兄上は狭量すぎる。じゃあなんて呼べばいいんだよ」
ギャーギャーお二人で喧嘩をされていると、お義母さまが来られてピシャリと一刀両断された。
「男がガタガタ煩いわね、黙らっしゃい」
ギッと睨みつけ、お二人は口を閉じられた。お義父様は頭を抱えてやれやれと首を振っていらっしゃる。
「ごめんなさいね、この子達外では完璧なんだけど家では駄目な息子達なのよ。ミシェルさんは、お友達にはなんと呼ばれているの?」
「親しい方には『シェル』と呼ばれていますわ。父や兄とは職場で会うので、家族にはあえて愛称はなしでミシェルと呼ばれていますけれど……」
「そう。もしよければ、私たちも『シェルちゃん』って呼んでもいいかしら?もちろん公式の場ではきちんと本名で呼ぶし、フェリクスにもそう呼ばせるから」
「はい!もちろんです。お義母様に愛称で呼んでいただけるの嬉しいです」
そう笑顔で言った私を、お義母様は「可愛い!私、ずっと娘が欲しかったのよね」とギュウギュウと抱きしめて下さった。こうして、やっと呼び方の問題は決着しました。
「あーあ、義姉さんって呼びたかったな」
フェリクス様はまだ拗ねていらっしゃるようだ。
「あの!呼び方は違いますが、私できる限り早くフェリクス様のお姉様になれるように頑張ります!」
デーヴィ様はゴホゴホとむせ、他の三人はくくくっと笑っていらっしゃる……なぜ?
「……っくく、姉にはなってくれるんだ。じゃあ、僕いーっぱい甘えるね」
「全て却下」
不機嫌なデーヴィ様の声で私が姉になることは完全になくなったのであった。




