74 ご挨拶②
客間に案内され、美味しい紅茶と美味しいお菓子をいただきながらお話をする。私の手作りクッキーとケーキもお渡ししたところ、とても喜んでいただきなんとすぐに食べていただけた。
「このクッキーお店のより美味しいわ。ミシェルさんは本当にお料理上手なのね」
「パウンドケーキも酒がきいていて、男の私でも沢山食べてしまいそうだ」
お二人ともたくさん私を褒めてくださるので照れてしまう。そんな私をデーヴィ様は嬉しそうに見つめている。
「ロバートとは仕事の付き合いが長くてね。よく君のこと聞いていたんだ。素晴らしい娘がいるってよく自慢してたから」
「父がす、すいません。お恥ずかしい限りです」
「ミミが素晴らしいのは、本当のことだしね」
デーヴィ様はニコニコととんでもないことを言っている。とりあえず少し黙って欲しい。
「私とシャーロット様も仲良しなのよ。この前は彼女とお友達を呼んで刺繍の会をしたの」
「そうなんですね、私も刺繍好きなのでまたご一緒させてください」
お二人はとても優しくて、素敵な方だ。でもしっかりと私は言っておかなければいけないことがある。
「あ、あの!婚約のご挨拶が遅くなって申し訳ありませんでした。私至らぬ点ばかりですけど、頑張ってデーヴィド様をきちんと支えますのでどうか妻としてお認めいただけないでしょうか」
お二人とデーヴィ様はキョトンと驚いた顔をしたまま黙っている……え?何か私変なこと言った?
あはははははは、お二人はお腹を抱えて笑っていらっしゃる。デーヴィ様はなんだか気まずそうな顔だ。何がおかしいのだろうか……?
「あー……笑ってすまないね。デーヴィド、お前まさか彼女に言ってないのか?『結婚するのであればミシェル以外あり得ない』とこの三年間私に言い続けたことを」
私は彼を見ると「父上、バラさないでください」と下を向いた。三年間……ということは彼が私に再会し一目惚れしたと言っていた時からずっと?
「その当時は相手が十五歳の少女だと聞いた時は、私は親として必死で止めたよ。こいつは君が大人になるまで待つと言い張ったが……年の差もあるし、成長したミシェルさんが息子に振り向いてくれる可能性は低いと思っていたから」
うん、それは親として普通の感覚だと思う。
「なのに俺の話も聞かず、持ってきた縁談は知らぬ間に勝手に断って、挙げ句の果てはミシェルと結婚できなければ独り身でいると公爵家の長男とは思えない発言をする始末。もうこいつの結婚はないなと私も妻も半ば諦めてた」
「……それはご両親としてはご不安でしたよね」
苦笑いしてチラリと彼を見ると、デーヴィ様は耳まで真っ赤にして下を向いて顔を隠してしまっている。
「だから、認めるどころではなく……ミシェルさんは大歓迎だ。むしろ君にお礼を言いたい気持ちでいっぱいだよ、息子を好きになってくれてありがとう」
お父様は嬉しそうに微笑んでくれた。
「しかも、詳しく聞いたら十八歳の時にデーヴィドの人生を変えてくれた八歳の天使がミシェルさんだったって言うじゃない?あの時のこの子はなんでもそれなりに器用にできるから、全てにやる気がなくて、気怠げで困ってたの。デーヴィドが今、英雄とか言われたり、騎士団長してるのは貴方のおかげよ。本当にありがとうね」
「とんでもないです!私は何もしてません。今の地位や実力は彼の努力の賜物です」
「いや、母上の言う通り俺が前向きになれたのは全て君のおかげだよ。だから、君以外とは結婚したくなかった……重くてごめん」
そう言った彼をご両親は温かく見守っていた。




