73 ご挨拶①
さらにこの仲直りをきっかけに、デーヴィド様は愛称で呼び合いたいと言われた。私のことは『ミミ』と呼びたいと……そんな甘い愛称は照れるので『シェル』と呼んでとお願いしたが、みんなと一緒は嫌だと却下された。
私に呼ばれるのも特別がいいと子どものように強請られ『デーヴィ』と呼ぶことに決まった。
……私、呼べるかしら?不安だわ。
そして、二人で手を繋いで部屋から出てきたところを、ユリアやお母様に見つかり、ニヤニヤ冷やかされながらも「仲直りしてよかった」と喜ばれた。
♢♢♢
今日は初めて私がメクレンブルグ公爵家に伺う日だ。後先が逆になってしまったが、婚約したご挨拶をご両親と弟さんにするためなのでドキドキしてしまう。
「変じゃない?ちゃんと清楚な御令嬢に見える?」
私は不安になり、ユリアに何度も確認する。
「もちろんです、お嬢様。どこからどう見ても美しく可憐で清楚に仕上がっています」
彼女の渾身の作なので大丈夫だと信じている。うちの両親はデーヴィド様のご両親と昔から知り合いらしいが、私はお見かけしたくらいで全く交流がないのだ。
色々とあったとは言え直接彼のご両親にご挨拶する前に、婚約したため私に悪い印象を持たれていないか不安になる。私の知らぬ間に双方の親は婚約や結婚についてきちんと話したそうだが……
私は手作りのクッキーとパウンドケーキを焼いてお渡ししようと心を込めて朝からお菓子を作り、綺麗にラッピングした。
しばらく馬車に揺られ、ついにメクレンブルグ家に着いた。馬車から降りようとすると、デーヴィド様がエスコートのために待っていてくれた。
「ミミ、いらっしゃい。来てくれてありがとう」
今日の彼は自分のお家だから、髪を下ろしていらっしゃるのでいつもより若く見えて新鮮だ。しかも……ちゃっかり私を愛称で呼んでいる。
「デーヴィ……様、お出迎えありがとうございます」
「緊張してる?大丈夫だからリラックスしてね」
「は、はい」
公爵家はとっても広くて驚いた。ロレーヌ家もそれなりに大きいはずだが、デーヴィ様の生家は比べ物にならない規模だった。
ずらーっと使用人達が並んでお出迎えしてくださっているのを、私はペコペコお辞儀をしながら歩いていく。
玄関についたところで、デーヴィ様のご両親が待ってくださってきた。
「初めまして、私はミシェル・ド・ロレーヌと申します」
私は自分のできる最大限美しい挨拶をした。
「いらっしゃい、よく来たね」
「まあ、可愛いらしいわ。こんな子が私達の娘になってくれるなんて嬉しいわ」
デーヴィ様に似たお顔の体格の良い男らしいお義父様と、セクシーでキリッとした美人なお義母様が立っていらっしゃった。
わー……美形家族だわ、とぽーっと見惚れていた。
「こんなところで話すとミミが困るだろ。ほら、こっちだよ。一緒に行こう」
彼は私の手を繋いで、客間まで案内してくれたがご両親の前でとても恥ずかしかった。
「ねぇ、あなた聞きました?あの子のあんな甘い顔と声!彼女が嫁に来てくれて良かったわね」
「ああ、いつものあいつと違いすぎて驚いた。手まで繋いで……これから奴を揶揄うのが楽しみだ……くくく」
「楽しくなりますわね、うふふふふふ」




