72 仲直り
アンヌにまんまとやられた。賢い彼女はさっきわざと恥ずかしいことを大声で言ったのだ。
「ミシェル……久しぶりだね」
「昨日も騎士団でお会いしています」
私はまたついつい可愛くない発言をしてしまう。
「君の目を見て言葉を交わすのが久しぶりだ。ミシェルと話したかった」
彼は私の傍に来て、そっと手を握ってくれる。
「君は嫌がってたのにごめんね。ミシェルは何も悪くないのに婚約者になったら独占欲が強くなってしまって、嫉妬してしまったんだ」
「私のこと信じてもらえてないのかな?って悲しかった。仕事でどれだれ男性と関わろうと、私が好きなのは貴方だけなのに」
勇気を出して素直な気持ちを伝えた。デーヴィド様は嬉しそうに微笑み私を抱きしめた。
「ありがとう。私もミシェルが好きだ。この世で一番大好きだ」
私は真っ赤になって固まって棒立ちになる。
「あと、仕事場では節度を持って接して欲しい。恥ずかしくて耐えられません」
「ちゃんと約束守る。本当にごめん。君よりだいぶ年上なのに余裕なくて思春期のガキみたいだけど君を好きすぎて……いつでも触れたくなってしまって」
デーヴィド様はごにょごにょと恥ずかしそうに謝ってくださった。そして、私の前に跪いて三本の赤い薔薇の花束を差し出してくれた。
「ミシェル許してくれ。愛してる」
私は薔薇を受け取り、一本抜いて彼に渡す。
「許します。私にはデーヴィド様だけです」
彼は嬉しそうに笑い、私の頬に手を置き口付けをしようとしたが……彼はスッと体を離して私の頭を優しく撫でた。
私がこの前嫌がったから遠慮しているのだろうか?我儘だが、してもらえないのは寂しい。口付け自体が嫌なわけではないのに。
「ここは落ち着かないので、私の部屋に行きましょう」
そう言ってデーヴィド様の手を引き、自室へ向かう。婚約した私達はやっと使用人なしで二人きりになれるようになった。
私は部屋に入り、鍵をかける。そのことにデーヴィド様は少し驚き「ミシェル?急にどうしたんだ」と戸惑いながら私に近付き顔を覗き込んできた。
私は背伸びをして彼にちゅっと軽い口付けをする。
「執務室が嫌だっただけで、口付け自体は嫌じゃないです」
「なっ……」
彼は驚いてしばらく真っ赤になって固まっていたが、すぐに「ここで煽るのはなしだろ」と呟いた後に意地悪そうにニヤリと笑った。
「嫌じゃない、じゃなくて俺との口付け好きって言わせたいな」
デーヴィド様は私に優しくちゅっと口付ける。そのあとも何度も何度も吸いつかれる。は、恥ずかしいけど……気持ちが良い。
「この一週間ミシェルが足りなかったから、いっぱい充電させて」
唇を舐められ、だんだん深く濃厚な口付けに変わっていく。
「ミシェルの唇、柔らかくて甘くて溶けそうで大好き。ねぇ……俺との口付け好きになった?」
私は恥ずかしくて俯いて返事ができない。
「まだ嫌いじゃないレベル?それなら好きって言ってくれるまでずっとしようかな」
「す、好きです。デーヴィド様とするのす、すき……」
それを聞いて彼は嬉しい!可愛い!とまた顔中にちゆっ、ちゅっとキスの嵐を降らされた。何て返事してもするんじゃない!もう私はいっぱいいっぱいで倒れそうだ。
「そういえば、ご自身のこと『俺』って言われるんですか?」
「俺って言ってた?公式の時と……ミシェルには怖がらせたくないから『私』で通してたんだけど」
「私の前では自然でいて下さい」
「じゃあ……これからは俺って言うね」
「はい。なんか近くなったみたいで嬉しいです」
そんなこんなで仲直りできました。




