【デーヴィド視点】彼女の親友
ルーカスに明日、家に行くと伝えると「妹がすみませんね。では、団長がちゃんと家に入れるように根回ししておきます。しかし明日はアンヌ嬢が遊びに来る、と言っていたので昼は避けた方がいいですね」とアドバイスをくれた。
♢♢♢
週末俺はラズリに乗り、昼の時間を少しだけずらしロレーヌ邸に向かった。この時間だとまだアンヌ嬢がいるとは思ったが、友人がいる方が会ってもらえるという下心があるからあえてだ。
「いらっしゃい。いいタイミングで来たわね。今、アンヌちゃんと部屋にいるから客間で待ってくださるかしら?声をかけてきますわ」
「いえ、勝手に来たのでアンヌ嬢との約束が終わるまで待ちます」
夫人には俺があえて早めの時間に来たことがばれているようだ。俺は出して貰った紅茶も飲む気になれず、どう謝ろうか考えていると扉前からざわざわと声が聞こえる。
「嫌っ、急だと心の準備ができてない!」
「いい機会でしょ、さっきちゃんと話すと約束したじゃない」
「したけど、今日は無理」
「来られているのを知った以上、私より家格が上の彼にご挨拶しないわけにはいかないもの」
「挨拶なんていらないっ。私が責任とるから」
うーん、小声だが全部聞こえている。やはり、ミシェルはまだ俺に会いたくないのか。ただ、アンヌ嬢がミシェルを引っ張ってきてくれているようだ。
トントントン
それからしばらくしてノック音が響いた。「どうぞ」と声をかけると「失礼致します」とアンヌ嬢が客間に入ってきた……ミシェルは扉の後ろに隠れているようだ。
「デーヴィド様、ご機嫌よう。お話させていただくのはお久しぶりでございますね」
彼女は貴族令嬢らしく美しい挨拶をした。
「久しぶりだね。いつもミシェルと仲良くしてくれてありがとう。そういえばディラン君と正式に結婚が決まったそうだね、おめでとう。優秀な彼と聡明な君はお似合いだ」
「ありがとうございます。私もデーヴィド様と親友のシェルの婚約も嬉しい限りですわ。おめでとうございます」
「ありがとう……ただ、私が不甲斐ないばかりに喧嘩してしまってね。会ってもらえないんだ」
アンヌ嬢は喧嘩のことはすでに知っているだろうが、あえて話題を振って助けを乞う。そのことに気が付き、彼女は微笑んだ。
「あら、そうなのですか?シェルは私にデーヴィド様を愛してる!四六時中一緒にいたい!とたいそう惚気ていましたのに」
彼女は急に大きな声でそう言った。その時、バンっと勢いよく扉が開きミシェルが立っていた。
「アンヌ!デーヴィド様に何勝手なことを言ってるのよ!私はそんなこと言ってないじゃない!」
ミシェルはその言葉にまんまと引っかかり、俺の前に姿を現した。つまり、彼女の作戦勝ちだ。
「ふふ。ミシェル、私の勝ちよ。彼とちゃんと話しなさい。意地も張りすぎると可愛くないわよ」
アンヌ嬢は俺に味方をしてくれたようだ。
「感謝するよ」
「私、結婚祝いにヴァロのティーカップが欲しいんですの」
ちゃっかりしている彼女は悪戯っぽくそう言った。ヴァロとは、高級アンティークで貴重なものだが、公爵家の力を使えばすぐに手に入るだろう。
「ティーカップと言わず、一式贈ろう」
「まぁ、素敵。シェル!良い方と婚約したわね」
「もう、親友を物で売らないでよ」
ミシェルは睨みながらもアンヌ嬢と戯れている。年相応の彼女の飾らない姿に自然と笑みが溢れる。
「仲良しだな」
「ええ、ですから……大事な親友をどうかよろしくお願い致しますね。私は失礼しますので、あとはお二人で」
彼女はさっきの冗談っぽさをなくし、真顔で俺に頭を下げて去っていった。




