70 アンヌに相談①
私はあの一件以来、三日間デーヴィド様を無視し続けている。
「ミ、ミシェルあの……」
デーヴィド様はあれから何度も話しかけようとしてくれるが、「団長、仕事のこと以外で話しかけないでください」と完全スルーしている。もちろん、お昼も一緒に食べていない。
私はちょっと気を抜くと、思い出しそうで恥ずかしいのだ。し、執務室で口付けなど……デーヴィド様がそんなに破廉恥だと知らなかった!
「ミシェル嬢、そろそろ許してやってくれませんか?今の団長は貴方が気になって全く仕事になってないし、常に凹んだり、イライラしたりして情緒不安定すぎて隊員達が怖がっていますから」
「副団長……もしかして彼が何をしたか聞いたと言うことですか?」
「ええ、完全にあいつが悪い。僕からもキツく怒っておきますから」
「……ってい!」
「え?」
「あ、あんなことを人にペラペラ話すなんて、デーヴィド様最低っ!許しません」
私はニコラ様に知られた恥ずかしさで、より意固地になりさらに三日間無視し続けた。
♢♢♢
「シェル、とっても会いたかった。もう無事で本当に良かったよ。なかなか来れなくてごめんね」
「心配かけてごめん。何言ってるの、すぐ手紙くれてたじゃない?嬉しかったわ」
今日は仕事がお休みのため、私は自宅で久しぶりにアンヌとお茶をしている。王の生誕祭から驚くほど色々あったので、彼女から心配する手紙を何枚も貰っており私もせっせと返事を返し状況報告していた。
「で、幸せなはずのシェルはなんでデーヴィド様と喧嘩してるわけ?」
「な、なんで喧嘩してるってわかるの?」
アンヌとの手紙のやりとりの時点では、私は両想いになって幸せでしかたがないと書いていた。まだ、あの話はしていないのだ……
「わかるわよ。この部屋不自然なくらい紫と青のヒヤシンスだらけだもん」
彼女は「正解でしょ?しかもこの量は長引いている証拠ね」と笑っている。
流石、彼女はとても賢くて目敏い。そう、喧嘩してからというもの騎士団で無視してるデーヴィド様から毎日のように花束と謝罪と愛を書き連ねた手紙が届いているが、返事はしていない。
何度も家にも、来てくださっているが、絶対に通さないでと両親にも使用人にもきつく言っている……みんなから心配されているが、お母様が「ミシェルの気が済むまで好きになさい」と味方になってくれた。
紫のヒヤシンスは「許して」、青のヒヤシンスは「変わらぬ愛」だとユリアに教えてもらい、私は初めて知った。アンヌはこの花言葉をもともと知っていたのだろう。
「何が原因?」
「……スされたの」
私は俯きながらボソボソと話す。結局、私は恥ずかしくて今まで誰にも相談できなかったのだ。
「なんて?大丈夫、誰にも言わないから」
「デーヴィド様に……し、仕事中にき、キスされたの!」
アンヌは「はぁ?」という不機嫌そうな顔をした。
「何それ?私はただの惚気を聞かされてるの?」
「ち、ちがう!だって嫌だって言ったのにやめてくれなくて。しかも、その時は治癒士として普通に仕事してただけなのに無防備な私が悪いって言ったのよ!酷いと思わない?」
「ああ……なるほどね」
彼女は納得したように頷いたが、私は全く納得できない。




