66 戯れ
初めての長く激しい口付けに、私はふにゃりと力が抜けてデーヴィド様に体を預ける。恥ずかしくて全身燃えるように熱い。
「こんなにされて……ません」
私は顔を上げて、上目遣いでムッと恨みがましく彼を睨んだ。
「頬を染めて潤んだ目で睨まれても、男には逆効果だっていい加減覚えて」
彼はそう言って、軽く触れるだけの軽い口付けをした。
「これで、上書き完了にするか……本当はまだ足りないけど」
両想いになってからというもの、デーヴィド様は私に触れることに遠慮がなくなった。態度も言葉も甘くて積極的で恋愛初心者の私は慣れなくてどぎまぎして困ってしまう。
♢♢♢
「シェル、無事でよかった」
レオナルド様は私の姿を見て、優しく微笑んだ。
「レオ……様、お医者様を呼んでくださってありがとうございました」
「そんなこと当たり前だ。元はと言えば僕たちのせいだしね。もう元気なのか?」
レオナルド様が本当に私を心配してくれていたのがわかる。きっと本当は優しい方なのだ。
「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。おかげさまで、もう大丈夫です。力も戻りました」
「良かった。僕は君のお父上に傷を治してもらったが、治癒魔法とは本当にすごい魔法だな……瀕死の傷が治った。で、二人で話とはなんだ?」
「アルシャ帝国王、試合は中断になりましたが我々は伴侶はお互い以外考えられません。どうか、どうかお認め下さい」
デーヴィド様が跪き頭を下げるのを見て、私も同じように頭を下げた。
「へぇ。僕はシェルを手に入れるためなら、この国に戦争をしかけるかもしれないよ?それでもいいの?」
彼は意地悪くニッコリと笑っている。
「それならば……闘います。彼女を手に入れるためなら、何があっても最後まで諦めません」
デーヴィド様はレオナルド様を真っ直ぐ見つめ、私の肩をギュッと抱き寄せた。
「っく……あは……あははははっ」
レオナルド様が急に笑い出し、私達は戸惑いを隠せずお互い顔を見合わせる。
「あーあ、僕がこんなに派手に振られるなんてね。流石に、他の男のために命を懸ける女を無理矢理自分に嫁がせるなんてできないよ」
「では……私たちは一緒になっても」
「勝手にしろ。元々、王である僕とただの伯爵令嬢のミシェル嬢では釣り合いが取れぬではないか。今回の件は余のただの戯れと思い、忘れよ」
彼は王としてわざと冷たく言い放った。
「はっ、ありがとうございます」
デーヴィド様は先程より、更に頭を下げてお礼を言った。
「だが、ミシェル嬢が余の命の恩人なのは紛れもない事実だ。幸せにしないのであれば、お前の命はないと思え」
「もちろん、世界一幸せにします」
その言葉にレオナルド様はフッと笑った。
「五分だけミシェル嬢と二人きりにさせろ。別れの挨拶だ、何もせぬ」
デーヴィド様はあからさまに不満気な顔をしたが、私は「きちんとお別れをしたい」と伝え部屋を出て行ってもらった。




