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65 上書き

 翌日まで私はぐっすり眠り、医師にも動いて良いとお墨付きをもらってベッドからやっと動けるようになった(勝手に出ようとしてみんなにとても怒られたので、大人しくしている)


 お医者様は、アルシャ帝国の方らしくレオナルド様の命で我が家まで来てくださっているらしい……彼にもお礼を言わなくてはいけない。一度きちんとお話をせねば。


「レオナルド様と会わせてください」


 私はデーヴィド様にそう申し出た。


「私も……今日ミシェルとその話をしようと思っていた。いつまでも避けるわけにもいかぬから」


「あの、試合はどうなったのですか?」


「あの後は……もちろん試合を続けられる状態ではなく、陛下が両者引き分けという形で半ば無理矢理幕を引いてくださったらしい。私も人伝に聞いた話だが」


「そうでしたか」


「アルシャ帝国王ときちんと話して決着をつけよう。誰が何と言おうと私の妻は君だけだ」


「はい」


 デーヴィド様はなんだか難しい顔で、すごく気まずそうに視線を彷徨わせている。


「ミシェル……その君に失礼だし、とても言いにくいだろうがあいつにどこまでされた?君が辛い思いを強いられたのではないかと心配で……」


 どこまで?どういう意味だろうと首を傾げていると、手をぎゅっと握られる。


「もちろん何があったとしても私のミシェルへの気持ちは少しも変わらない。いや、じゃあ……何も聞くなと思うだろうが……しかし大事なことだ。ああ、だめだ。私は君のことになると途端に格好悪いな」


 デーヴィド様は頭を抱えてゔーっと悩んでいる。そこで、私は急に試合前にわざとレオナルド様が見せつけたキスマークのことを思い出す。こ、これのことかな?


「あの、キ……キスマークのことでしょうか」


 彼は青ざめた顔を上げ「ああ」と小さく呟いた。


「レオナルド様に食事中に急に首筋を吸われたのです。あとは……一度無理矢理口付けをされました」


「それ……以上は?」


「それ以上などありません」


「そうか。いや、もちろん口付けやキスマークのことは許せないが!でも無理矢理……その最後まで……されたのかと心配してたんだ」


 彼は口元を手で隠しながらほっと息を吐く。


「最後まで……」


 私はそれを想像してしまいぶわぁーっと全身が真っ赤に染まる。そんな大変な誤解を受けていたと知り驚いてしまう。むしろ私にちゃんと確認していただいて良かった。


「そ、そんなことあり得ません」


「君が酷い目にあっていなくて安心した」


 彼はギュッと私を抱きしめた。そんな心配までされているとは思わなかった。


「じゃあ……あいつに触れられたところは俺に上書きさせて?」


「えっ?」


 デーヴィド様は耳元で急に色っぽい声を出し、私が戸惑っているうちに痕が残っている首筋をペロリと舐めた。


「ひゃっ」


 私は急にそんなところを舐められ変な声が出てしまい、恥ずかしくて咄嗟に口を押さえる。


「ミシェル……もしかして、あいつにもそんな可愛い声聴かせたの?」


 彼は不機嫌な声でそう言い、更に同じ場所にジュッと強く吸い付く。チクッと痛みがあったが、彼は上書きされた痕を見て満足げに口角を上げて笑った。


「もう一つ頂戴。俺はあいつ以上じゃないと許せないから」


 そう言って、彼は鎖骨辺りを強く吸ってもう一つ赤い痕を付けた。私はドキドキが止まらず倒れてしまいそうだ。


「あとは……口付けか」


 私の頬をぐいっと手で挟み、少し強引に激しく口付ける。あまりに長いため息が苦しくなり、私は唇を離そうと口を開いた。その瞬間に隙間から舌が入ってくる。こんな……激しい大人のキスを私は知らない。

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