64 目覚め
重たい瞼を開けると、デーヴィド様の顔が見えた。とても心配そうな顔で、頬が濡れて……もしかして泣いていらっしゃるの?
「ミシェル、ミシェル!気が付いたのか?」
ああ、良かった。デーヴィド様が生きていらっしゃる。私はあの時きっと、治癒魔法を使い過ぎて倒れたのね。
「デー……ヴィ……さ……」
喉がカラカラで声が出ない。彼はすぐに「喉が渇いてるよな、待っててくれ」と心配し、ベッドサイドに用意された水をコップに入れ差し出してくれる。
私は力が入らないのでコップで上手く飲めず、口から溢れてしまう。デーヴィド様はそれに気が付き「飲ませてあげる」と自分の口に水を含んで、口移しで少しずつ流し込んでくれた。
こくり、こくり
彼に触れてもらえる嬉しさと、意識が朦朧としていつもより恥ずかしさを感じなかったこともあり何度も受け入れてしまった。
「も……水……は大丈夫……です」
私は意識が戻ってくると同時に理性も取り戻し、真っ赤になりながらそう告げた。
「ミシェル、無事で……本当に良かった。君が目覚めるまで私は生きた心地がしなかった」
私を抱きしめる彼の手が震えている。「心配かけてしまいすみません」と彼の背中に手を回しぎゅっと抱きしめ返す。
「ミシェル、俺を助けてくれてありがとう。君のおかげで俺は生きている。でもこれからはこんな無茶は絶対しないと誓ってくれ」
「誓います……今回は私も命懸けの勝負だったから」
「勝負……全くミシェルには敵わないな」
フッと笑って、私に触れるだけのキスをしてくれた。そして彼は私の頭を撫で、みんな心配してるから声をかけてくると席を立った。
ドキドキドキ
デーヴィド様に触れられた部分が全て熱くなって恥ずかしい。
♢♢♢
「ミシェル!!」「お嬢様っ!」
お母様にお兄様、ユリアや他の使用人達もみんな涙を流しながら私の無事を喜んでくれた。そして、お父様は私のベッドに無言で近付いてきた。
「お父様、ご心配をおかけしました」
「ミシェル……お前は」
パンッ
部屋の中に乾いた音が鳴り響く。お父様は私の頬を思い切りぶったのだ。もちろん、私のことを溺愛しているお父様に殴られたのは生まれて初めてだ。
みんなは父に驚いて息を飲む音だけが聞こえる。
心配して私に駆け寄ろうとするデーヴィド様をお母様が手で止める。
「馬鹿娘が……無茶をして。ぶ……じで良かっ……た」
お父様は掠れた声で、私をぎゅーっと抱きしめた。
「ひっく……ひっく……お父様……ごめんなさい。ありがとう」
私は涙が止まらなくなり、お父様の胸で子どものように思いっきり泣いてしまった。お母様が私の様子を見て微笑み「今は二人きりにしてあげて」と部屋からみんなを出してくれた。




