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【デーヴィド視点】君の声

 『デ……ド……さ……ま』


 何か声が聞こえる……誰……泣いてる?

 でも体が重くて……動けな……い


 『デーヴィド様っ』


 こんなに……必死に……俺を呼んで……

 泣かないで……この声……だ……れ……だっけ


 『生きて!!死んではだめ』


 その瞬間、頭の中でミシェルの声が大きく響き意識が覚醒する。ガバッと起き上がり、現実なのか夢なのかわからない俺は混乱して取り乱した。


「ミシェル!ミシェルは?ミシェルはどこだ!」


 ベッドで叫ぶように大声をあげる。


「団長、急に起きては体に触ります」


 目の前には、急に起き上がった俺に驚いているルーカスが座っていた。


「意識が戻られてよかった」


 そう言う彼に、俺は嫌な予感がする。アルシャ帝国王の剣に突き刺された俺の体が無事なわけがない……即死してもおかしくないレベルの傷だったと思う。そして、俺は意識が途切れる直前、ミシェルの姿を見た。


「ルーカス答えてくれ。ミシェルは……どこだ?無事なんだよな?」


「生きてはいます。とりあえずは……」


「どういう意味だっ!」


 ルーカスは俺から目を逸らし俯きながら、拳をグッと握りしめ声を出した。


「……瀕死の貴方を治すために治癒魔法(ヒール)を使いすぎたんです。つまり魔力切れです」


「ま……りょ……く切れ」


 俺はそれを聞いて頭が真っ白になった。魔力切れは治癒士(ヒーラー)にとって最も危険なことと言われているのを知っている。過去には力の使い過ぎで命を落とした治癒士(ヒーラー)もいると聞いていたからだ。

 彼女が俺を治そうと無理をして全魔力を投入したことは、簡単に想像できた。


 こんなはずでは……彼女を守りたかっただけなのに、結局俺が彼女を危険に晒しているではないか。


「妹は意識がまだ戻っていません」


「も、戻るんだよな」


 ルーカスは無言のまま答えてくれない。


「おい!ルーカス!!答えろ。ミシェルの意識は戻るんだよな」


 俺は彼の胸ぐらを掴み大声を出す。


「戻ると信じていますが、正直わかりません……俺達は幼少期からずっと魔力切れだけは起こすなと父に言われてきましたから」


「そんな……」


 ルーカスを掴んでいた手からズルッと力が抜ける。


「いや、大声を出して悪かった。全て私のせいなのに……ルーカス、ミシェルの傍に連れて行ってくれ……頼む」


「はい」


♢♢♢


 ミシェルはそれから二日経過しても、意識がもどることはなかった。俺はほぼ一日中彼女の傍にいて、手を繋いで祈っている。


 アルシャ帝国王の命で、自分が連れて来ていた帝国一の腕利きの医師をロレーヌ家に派遣してくれており、ミシェルの体調管理をしてくれていた。

 彼女の体は問題はないらしく、意識が戻らないのはやはり魔力切れのせいだろうという判断だった。


「ミシェル、君のおかげで私は助かったよ。ありがとう」


「ねえ、そろそろ目を覚まして。私に可愛い君の声を聴かせてくれ」


「君のいない世界など生きていても仕方がない」


「ミシェル、ミシェル……お願いだ……返事をしてくれ」


 ずっと声をかけ続けるが、彼女は俺の呼びかけに答えてはくれない。


 試合前に彼女に貰ったペンダントは激しい戦闘のせいで、欠けてしまっておりそれも不安を助長させる。いや、欠けてはいるがここにちゃんとある。絶対に大丈夫だと祈るように握りしめた。


「団長……代わるので少し寝てください。この二日全く寝ていないでしょう」

 

 ルーカスが俺を心配し、声を掛けてくれたが首を横に振る。


「離れたくないんだ」


「……わかりました」


 そう言ってルーカスは部屋を出て行き、また二人きりになる。彼女の唇にそっと口付ける。唇から感じる温かさだけがミシェルが生きてる証拠のように思えた。


「愛してる。君以外何もいらない……」


 ぽた……ぽた……


 俺は彼女の頬が涙で濡れるのもかまわず、声を噛み殺し泣いた。


 ぴくっ


 今、彼女の瞼が動いたような?


「ミシェル、ミシェル!気が付いたのか?」


 その声に彼女は重たそうに瞼をゆっくり開け、パチパチと瞬きをした。

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