63 治癒魔法
彼は私に「愛している」と告げた後、ぴくりとも動かなくなった。
「……貴方を死なせはしないわ。絶対に」
私は加減せず最大量の治癒魔法をかける。ブワッと彼女の全身を光が包んだ。
「デーヴィド様!生きて!!死んではだめ」
どくどくと流れる血は止まらない。すでに彼の心臓は止まっている……早くしないと間に合わない。
チラッと隣のアルシャ帝国王を見ると、彼も血だらけで瀕死状態だがわずかに動いているので息はあるのがわかる。彼は生きている。
「レオナルド様も頑張ってくださいませ。すぐに父と兄が治しますから」
私はその間も治癒魔法をかけ続け、傷は徐々に塞がっていくが、意識は戻らない。力を使いすぎている私はグワングワンと頭が痛いし、気を抜けばすぐに意識が飛びそうだ。
「デーヴィド様っ!お願い、目覚めて」
「デーヴィド!デーヴィド!」
私は声をかけ続けるが、返事はない。
「ミシェル!やめなさいっ!そんなことをしたら、お前が魔力切れになる」
「すぐ行くから待ってろ」
離れた場所から走ってくるお父様とお兄様が見え、大声で私に話しかけている。
わかっている、魔力切れは命を落とす危険性がある。でもデーヴィド様を死なすわけにはいかないのた。私は、無視して力を使い続けた。
「ミシェル!どけ!お前の魔力はもうほとんどない。限界だ……一旦離れてルーカスと代われ!!」
父と兄が駆けつけてくれたようだ。
「ルーカス、私はアルシャ帝国王の治療をする。死なすわけにはいかん」
「父上、わかりました」
私はそれでも治癒魔法をかけ続けた。
デーヴィド様っ……デーヴィド様!
目を覚まして!!お願い。
「ミシェル!!いい加減言うことを聞け」
お兄様の怒号が聞こえるが……何を仰っているのか頭に入ってこない。
私が治療をやめたらデーヴィド様が目を覚ますことがないような気がするの。
そんな時、ガッと父に強く腕を掴まれた。
「傷は全て治ってる。これ以上は無意味だ、もう……やめなさい」
そう言われて、震える手で彼の心臓を触る。
トクトクトク
意識は戻っていないが、心臓は動いている。
「良かった……よかっ……」
心臓が動いてよかった。デーヴィド様が死んでしまっては私が幸せになれません。
どうか……どうか生きてくださいませ。
私は安心した瞬間に、目の前が真っ暗になり意識を失った。
「ミシェル!ミシェル!!しっかりしろ」
ミシェルと呼ぶ声が……聞こえる……
でも、反応……でき……ない……
疲れたの……少し……やすま……せて……
「ミシェル!ミシェル!!」
私の名を呼ぶ声に反応することはできなかった。




