62 決闘
ついに決戦の時――私は真っ白なドレスを着せられ闘技場の真ん中に立っている。闘いの支度をしたデーヴィド様とレオナルド様が私の前に現れた。
(どうか……デーヴィド様ご無事で。貴方が生きていてくださることが一番です)
私は祈るようにゆっくりと瞳を閉じた。
「ああ、やはり白を着せて正解だな。シェルは美しくて可憐な天使のようだ……君もそう思うだろ?」
レオナルド様はデーヴィド様に話しかけているが、彼はギロっと睨みつけ無視している。
レオナルド様はその様子をふふんと鼻で笑い、私に近付いてくる。
「シェル、だめじゃないか。僕が愛した印を隠したら」
彼はわざと大きな声を出し私の首筋に付けたキスマークをトントンと叩いた。その瞬間、ユリアに化粧で必死に隠してもらった赤い痕をグッと手で擦ってデーヴィド様に見せつけた……今着ているドレスもこの男がわざと首元が開いているものを選んでいるのだ。
私はデーヴィド様にこの事を知られてしまった恥ずかしさから、真っ赤に頬を染め「触らないでっ」と手を払いのけ、パッと首元を抑えた。
その瞬間、怒ったデーヴィド様がレオナルド様の胸ぐらを掴み「絶対にお前を許さない」と睨みつけた。
その時、デーヴィド様の首にマルクさんが「王に不敬ですよ」と短剣を突きつける。
「もう、やめてくださいっ!」
私は涙を流しながら必死に叫んだ。
「マルク、いいから下がれ。歳を食ってるわりに貴方は短気だね」
「……二度と彼女には触れされない」
彼はそう言い、胸ぐらを掴んだ手を乱暴に離した。
♢♢♢
「今からハーメルン王国と我が国アルシャ帝国の友好のため交流試合を始める!例え王である私が怪我をしたとしても、この試合では不問だ。文句を言うものは許さぬ」
レオナルド王が高らかに宣誓され、試合が始まる。一応、建前としては交流試合ということになるようだ。観客席にはいっぱい人が見に来ている。
「交流試合はじめ」
デーヴィド様とレオナルド様の闘いはものすごいものだった。二つの剣がカンカンと激しくぶつかり合い、火花を散らしている。動きが素早すぎて私の目ではきちんと動きが追えないが、実力はほぼ互角。もう半刻以上この状態が続いて続いている。
デーヴィド様は恵まれた体格を活かして豪快で力強い剣、逆にレオナルド様は舞うような華麗な剣技である。
「ほお、さすが英雄と言われるだけのことはある。シェルのことがなければ我が国にスカウトしたいくらいだ」
「黙れ。誰がお前になど仕えるか」
二人は何か話しながら闘っているが、私には聞こえなかった。
(デーヴィド様……負けないでください)
両者かなり汗をかき、少しずつ呼吸が乱れてきているため決着がつくのも時間の問題に思える。
「アルシャ帝国王は若いが流石に強いな」
「いや、うちの英雄も負けてはいない」
「どっちが勝つかわからないぞ」
「交流試合なのに二人とも本気だな」
客席からは色々な声が聞こえてきた。




