【デーヴィド視点】眠れない夜
今日はミシェルを交えて、陛下とアルシャ帝国王達と王宮で話をする日だ。絶対に彼女を手放したりしない……そう心に決めてここに来た。
それなのに彼女は信じられない言葉を口にした。
「……大変光栄にございます。かの大国、アルシャ帝国の帝王様に見初めていただき、正妃になるなど夢のようです。私、喜んでお受けいたしますわ」
なんだって?そんな言葉信じられるはずがない。彼女は無理矢理そう言っているに決まっている。
だって……彼女は公爵夫人でも嫌がっていたのにアルシャ帝国の正妃など望むわけがない。
「レオ様、この男とのことはもう過去のことです。私貴方について行きますわ」
あいつを愛称で呼ぶのもわざとだ。わかっている……わかっているが嫉妬で頭がおかしくなりそうだ。しかも、彼女からあいつの頬に口付けた。
やめてくれ。君から他の男に触れるなんて耐えられない……
ガリッ
握りしめた拳の力が強すぎて血が出る。本当の彼女がこんなこと望んでいるわけがない。それは俺がよくわかっているし、こんなことを言わざるを得ない状況を作ってしまった自分が情けない。
このまま……引き下がるわけにはいかない。
気が付けば俺は無意識に剣を抜き、喉元に当てていた。彼女が俺の元に戻るのであれば自分の命など惜しくはない。
俺はアルシャ帝国王と一対一で闘う権利をもぎ取った。負けるわけにはいかない。
俺の人生に希望をくれたミシェルと別れるならば、生きている意味がない。彼女が帝国に嫁げば……俺は二度と彼女に会うことができないのだから。
♢♢♢
明日のために休まなければと思うが、ミシェルが心配で何も手につかない。そんな時、部屋にヘンリーがやってきた。
「団長!ミシェルちゃんどうなってるんですか!」
ヘンリーは怒りを隠そうとせず、乱暴に俺の部屋を開け勝手に入ってきた。いつもなら不敬だと怒号を飛ばすところだが、今はそれどころではない。
彼女と想いが通じ合ってから、ヘンリーときちんと話したのは始めてだった。俺は簡単に今の彼女の状況を説明した。
「俺はあんただから……団長だから仕方なくミシェルちゃんを諦めたんです!アルシャ帝国に嫁がすために諦めたわけじゃない!!」
机にバンっと手を置いて大声を出す。
「わかってる。アルシャ帝国王だろうがなんだろうが渡すつもりはない……明日、俺はあいつと勝負する」
俺の言葉を聞いて安心したようにニヤッと笑った。
「さすが団長!そうでなくちゃ……お願いしますね」
「お前にお願いされるまでもない。彼女がいない人生など俺にとって意味がない」
そう言うとフッとヘンリーは笑った。
「でも……今も王宮にミシェルは閉じ込められてる。それが心配なんだ。警備を蹴散らすのは簡単だがそれでは解決にならない」
俺は彼女が心配で目をつぶり、頭を抱える。
「俺が窓から忍び込んで、様子みてきますよ」
「は?」
「俺得意なんですよね、伊達に遊び人してなかったてゆーか」
こいつはあははと笑ってる。
「いや、王宮だぞ?しかもミシェルがいるのは三階だ」
「余裕です。御令嬢方の屋敷に何度忍びこんでると思ってるんですか」
俺はさっきと違う意味で頭を抱える。こいつは本当に……
「任せてください」
「……頼む」
今はヘンリーを頼るしかなさそうだ。俺はミシェルに今の気持ちを手紙にさっと書き渡してもらうようにお願いした。




