【デーヴィド視点】心配
今ミシェルがアルシャ帝国王と一緒にいると思うと嫉妬と怒りで体が震える。もし戻って来なかったら?彼女が何かされたら――不安が拭い切れない。
会っている部屋を蹴破りたい気持ちだが、扉の前の警備は厳重で近付けそうにもない。
「デーヴィド様、顔色が悪いわよ。どうかなさって?」
そんな時ヴィクトリア様が真っ青な顔の俺を見て、笑みを浮かべながら楽しそうに声をかけてきた。一番会いたくない女だ……
「あなたでしょう。生誕祭にアルシャ帝国王を招待したのは」
俺は憎しみを込めた目で彼女を睨みつける。
「うふふ、ここじゃ話せないわ。部屋に入りましょう」
客間に入った途端、俺は彼女に抱きつかれる。
「そうよ、彼女が邪魔だったから。レオナルド王は留学時のご友人よ。この国で必ず手に入れたい女がいるから協力してほしいとお手紙をいただいたの」
この女に抱きつかれたところで不快な気持ちでしかない。俺は勢いよく体を引き離す。
「――まさかそれがミシェル嬢とは思わなかったけど。ちょうどいいから利用させて貰ったのよ」
「貴方は最低ですね」
「愛しいミシェル嬢を他国に嫁がせなくないのであれば、私と結婚しなさい。彼女が彼に嫁がなくていいように私とお父様で陛下を説得してあげるわ」
チッ、そう言うことか。つまり俺の問題に彼女は巻き込まれただけということなんだな。
「誰が何と言おうと、私の妻はミシェルだけです」
彼女は冷めた目で、すっと無表情にもどる。
「じゃあ、仕方ないわね。彼女が嫁いだ後に貴方を手に入れることにするわ」
バタン、と大きな音を立てて部屋から出て行った。
♢♢♢
宿舎に帰る気になれず、ロレーヌ邸でミシェルの帰りを待つ。不安で、心配で全然時間がたたない。
恥ずかしい話だが、落ち着かずずっと部屋をうろうろしてしまう。まだかまだかと待っていると、帰宅を告げる声が聞こえすぐに玄関に走っていき彼女を抱きしめる。
ああ、戻ってきてくれてよかった。彼女が近くにいるだけで安心する。その後、彼女は二人で話したいと言ってくれた。
「私が命に代えても君を守るから心配しないでくれ」
ミシェルはアルシャ帝国王の話をしてくれなかった。だが、脅しのようなことを言われているのは間違いない。だから、俺は必ず君を守ると何度も呪文のように伝えた。
彼女はそっと背伸びをして、俺に口付けてくれた。初めて彼女からしてくれたことに、喜びが込み上げてくるが……それと同時に不安が拭えない。
恥ずかしがり屋の彼女が自分から?なぜ?俺はその不安を拭い去るように何度も濃厚に深く口付けた。
帰り際の彼女の言葉がどうも引っかかる。
「ありがとうございました……さようなら」
さようなら?なぜそんな別れの挨拶のようなことを言うのか?胸がザワつく。
俺はまたとわざと言い直し、宿舎に戻った。




