58 命懸けの約束
「私と一対一で勝負してください。そこで私が勝てばミシェルを返していただきたい」
「デーヴィド!やめよ!」
陛下がデーヴィド様を咎める。
「私たち王の前でそのような野蛮な真似許されません。それにいくら別れたとはいえ知ってる男の血を見るシェルは後味が悪すぎるでしょう」
「本気です。受けていただけぬのであれば、私はこの場で喉を切ります」
ギリギリと剣を押し、首からは一筋の血が流れている。
「そのようなこと……やめてくださいませ」
私は堪え切れず震えた声で声をかけてしまう。
「いいだろう、明日の正午から勝負だ。ハーメルン王、闘技場をお借りしてもいいでしょうか?」
「それは大丈夫ですが、しかしこんなこと……」
「名目上は、交流試合としておきましょうぞ。今日はシェルは王宮に泊めさせます。二人で話したいこともあるので」
レオナルド様は泣いてるわたしの肩を抱き部屋を退出させた。
バタン
扉の閉まる音が聞こえる。どうしてこんなことになったのか。私が行けば誰も傷付かないのではなかったのか。
「あいつは馬鹿な男だな。シェルの優しさを無駄にするとは」
「私、嫁ぎますから……明日中止してください」
「そうしてやりたいが、命をかけたあの男との約束を違えるわけにはいかぬ。晩御飯は一緒に取ろう、それまでは部屋でゆっくり休め」
私の頭をひと撫でしてレオナルド様は離れて行った。
♢♢♢
「ごめんなさい……ユリアだけでも帰って」
「何をおっしゃますか、お嬢様のいらっしゃるところが私の居場所です」
その優しい言葉にまた涙が出てくる。
コツ……コツ……
窓に何かがぶつかる音がする。不思議に思い、私は窓を覗き込むとそこにはなんとヘンリー様がいた。驚いて窓の鍵を開ける。
「ヘ……ヘン……」
彼はよいっしょ、と窓から部屋の中に入ってきて私の口を手で塞ぐ。
「大きな声出さないで。秘密できてるんだから」
彼は小さな声でそう言った。この部屋の前は警備が何人もついており、中からは入れないそうなのだ。
「ここ三階ですよ……なぜこんなことができるんですか」
「あー……昔女の子と遊んでた成果?基本的に窓から出入りしてたから」
こんなに役立つなら、遊んでたことも意味あるよねと彼は苦笑いしている。そんなことを言うので、つい笑ってしまった。
「よかった、ミシェルちゃんが笑ってくれて。陛下の生誕祭から大変だったね」
「もう何がなんだか……」
「大丈夫、団長がなんとかしてくれるよ。あの人が心配だから様子みてきてくれって俺に頼んだんだ。本当は本人が行きたそうだったけど、さすがにバレたらやばいから止めた」
「ヘンリーさんにまでご迷惑を。すみません……最後の我儘です。彼に明日来ないでと伝えてくださいっ!殺されてしまうかも……」
私は彼の腕を握り必死にお願いする。
「ミシェルちゃん……なんで団長信じてあげないのさ?」
「え?」
「俺が諦めたのは、君の相手が団長だったからだよ。隣国に嫁がすためじゃないっ!」
ヘンリーさんが本気で怒っている。
「……なんか脅されてるんだろうけど、俺の前では偽らなくていいから」
彼は私の手をゆっくりと握った。




