7 楽しい時間
本当にこのニ週間ほぼ毎日団長と昼食を食べる日々が続いている。最初は「これは上官命令、上官命令……私は新人で断れない」と呟きながら重たい気持ちで団長の執務室に向かって居たが、最近はもう日課になってきた。
今までは無口なイメージだったが、団長は私に気軽に色々と話をしてくれる。しかもその話が悔しいことに面白いのだ。今まで倒した強い魔物のことや、王宮で食べた珍しいお菓子、森の奥に咲く珍しい花など私が初めて知ることばかりでつい前のめりになって話を聞いてしまう。
そんな私をみて団長は穏やかに微笑みながら「今日の昼食も美味いな」と褒めてくれるので照れてしまう。
「ご馳走様、ミシェルといる時間は一瞬で過ぎ去ってしまって困るな。時を止めたいくらいだ」
急に恥ずかしいことをサラッと言い出すので、むせてしまう。そんなこと男性に今まで一度も言われたことはない。
ゴホッゴホッ
「大丈夫か?」
団長は私の隣にすっと座り背中を撫でてくれる。大きな手に撫でられて、この人は男の人なんだと実感してしまい更に羞恥心が増す。
「だ……大丈夫です」
勢いよくパッと顔を上げると、私の背中に手を回したままの団長の整った顔が至近距離にあり、彼の熱っぽい視線から目が離せない。
バクバクバク
心臓が煩い。なぜか団長の顔が徐々に近付いてきている気がする――このまま……キスされちゃうかもと目をぎゅっと閉じた。
コンコンコン
静かな執務室にノックの音が響き渡る。
「団長、至急確認したいことがあるのですが、よろしいですか?」
副団長の声だ。私の意識が急激にしっかりしてくる。急いで立ち上がって団長とかなりの距離を取った。
「……入れ」
ピリピリと怒気を込めたような声で団長が入室許可を出す。
普通の人なら恐くてすぐに部屋に入れないような威圧感だが……副団長は団長と同期で仲が良いため何も気にしていないのかすぐに扉が開いた。
ガチャ
まだ顔の赤い私を見て副団長は一瞬驚いたが、すぐに表情を戻した。
「……お邪魔でしたね」
「ああ、かなりな。ニコラ、これでもし急用でなかったら覚えておけよ」
「本当に急用ですよ。午後から急な魔物討伐の依頼があったから、その確認です」
二人は真剣な顔で午後の予定を組み直している……どう考えても私は邪魔になるため、私は静かに食事のプレートを片付け「失礼します」と部屋を出ようとした。
「ミシェル、片付けすまない。今日もありがとう」
団長が笑顔でこちらに声をかけてくれる。私は「はい」と小さな声で返事をして足早にキッチンに戻った。
「デイヴ、いくら可愛いからってこんなところでミシェル嬢に手を出すな」
「出してねぇよ……まだな」