55 帝国王とのお茶会①
「ミシェルは、紅茶を飲んでる姿も可愛いね。これ僕がお土産に持ってきたんだよ?気に入った?」
ニコニコしながら私に話しかけている彼は、本当にアルシャ帝国の王なのだろうか?
「……とても美味しいです」
そう言うと、彼は嬉しそうに笑いこのショコラを食べろだ、このマカロンが美味しいと私に世話をやいてくれている。
なぜこんなことになっているんだろうか?私は騎士団から急に家に戻されて、ドレスに着替えさせられた。そして何故か王宮にユリアと一緒に来ている。
「貴方は治癒士の能力が欲しいから私を望むのですよね?」
そう言うと、彼は少し哀しそうな顔をした。
「違う、私はミシェルの優しさに惚れたのだ。あんな汚いボロボロの男を見捨てずに傷を治してくれ、高価な宝石を惜しげもなく渡すような優しくてお人好しな女性を僕は君以外知らないよ」
「大袈裟ですわ。困っていれば助けるのが人として当たり前です。私以外でもみんなそうします」
彼は目を細めて「困っていた僕を助けてくれたのは君だけだよ」とふっと笑いながら私を見ている。
「あの時、次期帝王に誰がなるか争いの真っ只中だった。先帝は王としては優秀だったが好色でな。妃が七人いて息子は九人もいた。ちなみに僕は側室の七男」
「その中で僕は一番頭も優秀で剣も飛び抜けて強かった。次の帝王は僕だとほぼ決まっていたが、年齢が若すぎるとの長男の反対側勢力もあり……一番信用していた側近に裏切られ僕は敵に囲まれ瀕死状態のまま、市民に化けてこの国まで逃げ出したんだ」
「そうだったのですね」
「裏切られたショックと、傷の痛みで生きているのが辛く僕はもう死ぬんだと思った…その時に君が現れた。僕に天使が舞い降りたかと思ったよ」
思い出しているのか目を閉じたまま、口は嬉しそうに弧を描いている。
「治してもらった後、僕はもう一度負けるものかと心を奮い立たせた。生きて君にお礼も言いたかったしね。そして部下達と合流し、兄を倒し僕が即位できたというわけだ」
「本当にありがとう」
彼は私に近付き、軽い礼をした。王が頭を下げるなど本当はあってはならないことだ。
「僕は君のように心優しい女性と生涯を共にしたい。今まで金と権力にすり寄る女ばかり目にしてきて、正直うんざりしてた。ミシェルに会って初めて愛おしいという気持ちがわかったんだ」
真剣にそう告げられ私は困惑の表情になる。でもはっきり言わなければ……
「そのようなことを言っていただき、恐れ多いことです。しかし、私はデーヴィド様という婚約者がおります。私達はお互い想い合っていて幸せなのです」
「……そんなにあの男が好きか?あの十歳も上の男の何が良いのだ。私の方が地位も名誉も財産も何でも持っているぞ」
「そのようなものいりません。彼は私をこの世で一番愛してくださっています」
「僕も君を愛している」
「それに……私も彼をこの世で一番愛しているのです」
帝国王はぐっと拳を握って黙り、俯いた。
「よい、では交渉だ。ミシェルは愛する男を死なせたくはないだろう。僕と君が結婚すれば、この国と友好条約を結び金銭的支援を約束する。国はより豊かになるだろうね……ただ、君が僕の物にならないと言うのなら、この国を攻めて僕の物にしたっていい」
「それは……」
私は最悪の結末を想像し、ガタガタと震えが止まらない。
「この国へ戦争をしかける」




