【デーヴィド視点】王命
舞踏会の翌日、俺とミシェルの父上は陛下に呼び出され王宮へ向かった。もともとこちらから話をしに行く予定だったが……向こうから話したいとなると嫌な予感がする。
「失礼致します」
「お前達と私の仲だ、挨拶はよい。よく来たな、今日は話したいことがあるのだ」
陛下の隣に……なぜかご機嫌な様子のアルシャ帝国王も座っている。
「レオナルド王は、ミシェル嬢をいたく気に入られたそうだ。そして、妻にしたいと所望されている」
俺と父上は、はっと息をのむ。
「陛下、恐れながら我が娘は治癒士です。彼女を他国に渡すことは自国の損失となりましょう。それに……娘がアルシャ帝国で治癒士として道具のように酷使される可能性も否定できません」
「はは、それは誤解ですね。僕は治癒士だから彼女を妻にしたいのではない。もちろん素晴らしい能力だと思うが、彼女の優しさに惚れたのです。正妃として迎え、大事にするので安心してください父上」
お父上はギロっとをアルシャ帝国王睨み「口では何とでも言えますからね」冷たく言った。
「陛下っ!私はミシェルを愛しており、すでに結婚の約束をしています。私の妻は彼女以外考えられません。どうかお考え直しください」
「調べたら君とミシェルはまだ正式に婚約していないそうじゃないか?今は君を好きだとしても、僕をもっと好きになってもらったらいいだけの話だ」
こいつ……もうそこまで調べてやがる。
「陛下、私にとって彼女はかけがえのない存在なのです!彼女がいないのであれば、私は命を断ちます」
「デーヴィド!落ち着け……レオナルド王は、ミシェル嬢を正妃に迎え、我が国と友好条約を結びたいと言って下さっているのだ。しかも、こちらに破格の条件でな」
その陛下の言葉に俺は青ざめる。この男は国を動かしてまでミシェルを妻にするつもりなのか?
「それはもちろんだ。愛する妻の母国は大事だからな。正式な我が国の後ろ盾があれば近隣諸国からは狙われまい。もちろん多額の支援もするし、困った時は軍事力も貸す」
「そんな好条件おかしいではないですか」
「おかしくはない。僕はそれくらいミシェルが欲しいんですよ」
「人質のような取引であれば、私ももちろん断ったが、彼のミシェル嬢への愛は本物に思える。だが、現在デーヴィドと想いあっているのも本当だろう。ただ、冷徹に思うだろうが私は王として国の利益を考えねばならぬ。貴族は本来政略結婚だ、わかるだろう?……一度彼女と直接話をさせてはくれぬか」
陛下がそんなことを言われた。いけない、彼女がこのようなことを聞いたら国のため嫁ぐと言い兼ねない。
「陛下、親の贔屓目ですが我が娘はとても優しい心を持っています。彼女が陛下のお話を聞いてしまうと、自分の本意と違っていても国のために受け入れざるを得ません」
「では僕と直接会って、彼女が気に入れば妻にするのはどうか?ゆっくり話したいんだ」
「それも同じことでございます。貴方様にそう言われてしまえば従わざるを得ません」
「ミシェルと仲良くなりたいだけですよ。彼女の信用する侍女を連れたままでよいので一席もうけてください。王宮内で我慢しますから」
「……これは王命だ、ミシェル嬢と侍女を連れてまいれ。そなたらは控えているように」
陛下の護衛が、「はっ」と返事しミシェルを呼ぶために足早に部屋を去った。
勝ち誇ったようなアルシャ帝国王の顔がとても不愉快だった。




