52 再会①
「あら、デーヴィド様。こちらのお嬢様が噂のミシェル様かしら?ご紹介してくださらない?」
声がした方を振り向くと、そこにはとても可愛らしいヴィクトリア様が立っていらした。
「これはこれはヴィクトリア様、私などに声をかけていただき光栄にございます。こちら、もうすぐ私の妻となるロレーヌ家の令嬢、ミシェルでございます」
デーヴィド様は一瞬だけ不愉快な顔をしたが、すぐに笑顔を貼り付け丁寧にお辞儀をして答えた。
「初めてお目にかかります。伯爵家が娘ミシェル・ド・ロレーヌと申します」
私は最大限美しくカーテシーをした。
「うふふ、本当にお美しい女性だこと。これはデーヴィド様心配ね。他の殿方が放っておかないはずだわ」
「身に余るお言葉をいただき、光栄にございます」
この方は本当はこんなこと思っていないだろう。私が婚約者になったことで、嫌味を言いに来たんだと思うが負けないように平然と答える。
「デーヴィド様一曲踊ってくださらない?……ミシェル様は婚約者が別の人と踊るくらいで嫉妬されるほど子どもではございませんでしょう?」
こちらをニヤリと笑い、彼の腕に手を回して私の反応を伺っている。王族からのダンスを断るなど不敬である。本当は嫌だが……受け入れるべきだ。彼も頭ではわかっているはず。
「ヴィクトリア様っ!離していただけませんか。私は……」
彼が断ろうとしてるのを私は止める。
「デーヴィド様!是非お受けしてくださいませ。私とは会場を出た後もゆっくり過ごせるのですから……ね」
わざと彼に近付き親密そうにそう告げた。デーヴィド様は私の台詞に驚いている。女には女の闘い方があるのだ。
「まあ……うふふ、ではお借りするわ」
「ミシェル……」
彼は私が離れるのが不安なのか、心配そうにこっちを見ている。
「大丈夫です。先程、アンヌを見かけたので話してきますね」と声をかけ背中を押した。
ダンスは社交の一種。これから彼と結婚するなら、今回のように私以外の女の人と踊る姿を見ることなど何度もあることだ。私が慣れなければいけない。
私はアンヌの姿を見つけ、声を掛けようとした時にそっと手を掴まれ、振り向いた。
「やっと会えた。僕の蒼玉の天使!」
「え?」
素晴らしく豪華な服を着ている私と同じ歳くらいの男性は、私の手を握ったままとても嬉しそうに笑っている……が、誰ですか?
「あの、天使とは?失礼ですが、人違いではないですか?」
「人違いなものか。私を救ってくれたその美しい青い瞳や、見事なブロンドの髪は君以外あり得ないよ。ああ、私に貴方の名を教えてくれないか」
なんの話だろうか?しかもこの男の人は異国の方だ。それに初対面なのに少し馴れ馴れしい。
「人に尋ねる前に、貴方が先に名乗るべきではありませんか?」
彼はそうはっきり言った私にキョトンとした顔をした。
「おい、不敬であるぞ!この方をどなただと思っている」
彼の従者が私に怒りの声をあげる。
「やめろ。彼女に失礼な態度を取るのは許さない」
従者を静かにひと睨みし、黙らせた。
「これは失礼致しました。僕はアルシャ帝国の王レオナルド・アレクサンドル・エーヴァルト。レディ、どうか名前を僕にお教えください」
彼は胸に手を当て私に軽く礼をした。
この人がアルシャ帝国の……王???なぜそんな方が私にお声がけを?




