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46 昔話①

「君は覚えていないだろうが、実は君が八歳で私が十八歳の時に初めて会った」


「本当ですか?覚えていません」


「あの時の君はお父上に連れられていたんだ。当時の団長と君のお父上が話している間暇になったのか、勝手に抜け出し騎士団の訓練場に入って来ていた」


 覚えてはいないが……幼少期はとても好奇心旺盛だったし、本で読んだ騎士に憧れていたので絶対に見に行ってるはずだ。


「恥ずかしい話だがその時の俺は、まだ入団したてで体も細く弱かった。騎士団も今よりもっと縦社会で厳しかったし、しかも爵位待ちの私は平民だが強い先輩達に生意気だと目の敵にされ毎日酷い訓練に付き合わされて心身ともにボロボロだった」


 それを聞き、私は胸が痛くなる。騎士は貴族の長男はあまりならない職種だ。メクレンブルグは公爵家なのに代々騎士という珍しいお家なのだ。


「もう辛くて逃げ出そうかなと本気で思っていた。なんで長男に生まれただけで、こんなしんどい思いをしなければいけないのかと文句ばかりだった」


「そして、君が来た日もボコボコにされて訓練場の端で倒れてたいたんだ。じゃあ急に女の子がやって来て『痛いの?』と私の顔を覗き込んできた。俺は恥ずかしくて、大丈夫と強がったが『私が治してあげる』と治癒魔法(ヒール)をかけてどんどん傷を治してくれて驚いた。君はふわふわの白いワンピースを着ていたから、一瞬本当に天使(エンジェル)が舞い降りたのかと思ったよ」


「そしてにこっと笑って『痛いの飛んでいったでしょ?もう大丈夫よ』と私の頭を撫でてくれた。その後も『この前絵本で読んだの!騎士はみんなを守って格好良いわね』と興奮気味に語ってくれた」


「私は弱いからみんなを守れないと言ったら『強くないなら、今から強くなればいいだけよ。私もお父様に教えてもらって毎日治癒魔法(ヒール)の訓練してるの、お兄様も一緒に頑張りましょう』と微笑んでくれた」


「私は、君の言葉に勇気をもらった。こんな小さな女の子も努力してるのに、私は文句ばっかり言ってなにしてるんだってって恥ずかしくなったよ。それに、君のことは調べなくてもすぐにわかった……治癒魔法(ヒール)を使える特別な女の子なんて君しかいないからね」


 彼はその時のことを思い出しているのか、遠い目で湖を眺めている。


「それからは、基礎から全てやり直した。何となくこなしてた訓練を、真剣に取り組み、毎日吐きそうなくらい努力した。そうしたら、どんどん才能が開花して……誰も俺に勝てる奴はいなくなったよ」


「とても頑張られたのですね」


「ああ……とてもしんどかった。でも自分を変えてくれた女の子に再会した時に、恥ずかしくないような自分でいようと思っていた」


 彼は私を見て優しく微笑んだ。


「あの……ではその、八歳の頃の私に好意を……」


 つい戸惑ったような困った顔をしてしまった。

 私はこの話を聞いて嬉しい気持ちと、もしかしてデーヴィド様は観劇の時にジュリア様がおっしゃっていた通り本当に『少女趣味』なのだろうかと少し不安になった。


「ち、違う!断じて違うぞ。確かに八歳の君も可愛かったが、私は幼児趣味はない」


 はっきり違うと言っていただいてホッとする。


「その時は、私に頑張るきっかけをくれた君に感謝してただけ。あとは君が幸せならいいなと勝手に兄のような気持ちだった」

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