45 ミシェルの色
家にデーヴィド様から返事が届いていた。私は緊張しながら手紙を開いた。
今週末、朝に君を迎えに行く。
馬で少し遠くに出掛けよう。
私も君に伝えたいことがある。
そう書いてあった。いつもあった愛の言葉はもう紡がれていない。私たちはもう終わったと言われているような気分になるが、会ってもらえるだけで嬉しい。
♢♢♢
週末、デーヴィド様は朝食を終えたくらいの早めの時間に迎えに来てくれた。
「おはよう……話すの久しぶりな気がするな」
「おはようございます。そうですね」
デーヴィド様は今日は愛馬のラズリを連れてきてくださっている。やはり……会話に多少気まずさがあり、私はラズリに助けを求めた。
「ラズリ、今日はよろしくね」
優しく撫でると、ラズリは目を細めて嬉しそうに私の頬に顔何度もすりすり寄せてくれる。ラズリには何度も会っているが、触れるのは久しぶりだ。
ラズリにペロリペロリ熱烈に舐められて「あっ」と変な声が出てしまい恥ずかしくなった。
「こら!ラズリ舐めるな。いくら会えて嬉しいからってレディに失礼だろ」
彼の怒った声に反応し、ラズリは大人しくなった。会えて嬉しいというのは……デーヴィド様の気持ちではなくラズリのことよね。
「さあ、行こうか」
二人でラズリに乗ると私はデーヴィド様に後ろから抱きしめられるような体制になりドキドキしてしまう。
「君は普段から馬に乗るから、少しスピードを出しても大丈夫か?」
「はい」
ラズリはスピードを出してぐんぐん駆けて行く。あまりの速さに驚いたが、落ちないようにデーヴィド様がさっきよりギュッと強く抱きしめてくれる。
彼の熱が腕から伝わって……胸が苦しい。
「見せたいものがある。少し目をつぶって」
「はい……」
私はそっと目をつぶった。その後少しだけラズリは歩きすぐに止まった。
「いいよ、目を開けて」
私はゆっくりと瞼を開けた。そこは緑の木々に覆われた森の中にあるサファイアブルーに透き通った湖だった。
「これは……すごい……」
私はあまりの美しさにほぅ、とうっとりした声が出てしまった。
私の驚いた顔を見て、デーヴィド様は満足気に微笑んだ。
「降りよう」
ラズリを木に結び、下に降りて湖の周りを歩く。
「こんな綺麗な場所、知りませんでした」
「私の秘密の場所だ。一度、君を連れて来たかった……色がミシェルの瞳みたいだろ?」
今日初めて名前を呼ばれた。それだけでドキドキしてしまう。それに私の瞳の色に似てるから連れて来てくれたなんて嬉しい。
「連れてきていただいて、嬉しいです」
「喜んでもらえて良かった。私が見たミシェルの最後が……泣いてる顔なんて嫌だったから」
彼は辛そうに俯いた。
「あの時はすまなかった。醜い感情を勝手に君にぶつけて、傷つけて……私は最低だった」
「デーヴィド様は何も悪くありません」
彼はやはり君は優しいね、とフッと微笑んだ。
「――実は私からも話したいことがある。君の話を聞く前に、少し聞いてくれないか?何故私がミシェルを好きになったかを」




