【デーヴィド視点】不愉快なお見合い
なぜこのような人目につくレストランで会わねばならないのか。王宮内で会うとばかり思っていたのに……あえてそうしている。不愉快だな。
俺の縁談の相手は王弟の末娘である。長く他国へ留学していたが、ついこの間帰ってきた彼女が俺を気に入ったとかで、国の英雄に褒美とし与え彼女を降嫁させようという計画だそうだ。
「デーヴィド様、きちんとご挨拶するのは初めてですわね。私、ヴィクトリア・グランヴェルと申しますわ」
にっこりと優雅に微笑んでいる。
「私はメクレンブルグ公爵家の長男デーヴィッドでございます。お会いできて光栄にございます」
失礼にならないよう、頭を下げ彼女の手を取り挨拶のキス……をする振りをする。
「あら……してくださらないのね」
そんなことを言われたが俺は笑顔で無視をする。そのままヴィクトリア様をエスコートして着席した。彼女は小柄で可愛らしいが、それ以上の感想はない。社交界ではいつまでも少女のようで愛らしいともてはやされているらしいが。
早く終わらないかなと思ってしまう。
「私、この国の若き英雄様にお会いしてみたかったの。このテラスも一度来てみたくて……場所をわざわざ指定してごめんなさいね」
「いえ。英雄だなんて、大袈裟です。私ははたいした者ではありません」
「私、貴方に興味がありますの。ねぇ、公爵家にとって王家との繋がりは有益ではなくて?」
「当家は昔から王家へ忠誠を誓っておりますし、恐れ多いことでございますが私も陛下に大変可愛がっていただいています。婚姻で繋がりを図ろうとは思っておりません」
「へぇ……貴方がずいぶん懸想していらっしゃる可愛らしいお嬢さんがいるというの本当なのね」
ついピクッと反応にしてしまう。
「彼女は本当に公爵家夫人として相応しいのかしら?社交も最低限しかされないようだし…将来戦場に行かれるなら体が危険ではありませんか?ちゃんと後継を残すことはできますの?」
ミシェルのことをすべて調べ上げているな。本当に腹が立つ。
「貴方には関係のないことです」
怒りのあまり声のトーンが低くなってしまう。
「関係あるわ。私今まで結婚なんてしたくなかったけど、貴方ならいいかと思ったの。デーヴィド様の頭脳、能力、美貌……全て気に入ってる。貴方と私ならお互い高め合って生きていけるわ」
「お戯れはおやめください。貴方ほど魅力的な方の伴侶に、私なんて相応しくありませんよ。別の方をお探しください」
「ふふふ……魅力的など、思ってもいないことがよく言えるわね。彼女がどうなってもいいの?」
俺はギロっとヴィクトリア様を睨んだ。
「あら、そんなお顔も素敵だわ」
「彼女に何かしたら俺は許しませんから」
「じゃあ、私を妻にしてくださいませ」
「……貴方ともし結婚しても子どもは生まれないと思ってください。俺には心に愛する人がいるんでね」
「私といれば貴方もその気になるわ。顔と体には自信があるの」
「フッ、ありえませんね」
俺はイラついてつい感情的になり、そんな言葉を吐いてしまう。
「体調がすぐれないため、失礼致します」
不敬だとは思ったが、耐えきれずにレストランを後にした。
「彼は本気なのね。でも私欲しいものは全て手に入れたい性分ですの。うふふ、上の階から大好きなミシェル嬢が私たちを見ているとは知らずに愚かなことだわ」




