40 傷だらけの男
50投稿目です。読んでいただいている方、本当にありがとうございます。
今日は珍しく戦場に一人で来ている。今日の討伐は訓練場から近い場所であるためお兄様が待機で、私が行くことになったのだ。
怪我人も軽症の方ばかりで順調に治療が終わっていた。そんな時、救護室の奥にある木がガサガサと揺れているのに気が付いた。
え?な、何なんだろう?……ゆっくりと覗くとそこには傷だらけでボロボロの私と同じ歳くらいの男性が倒れていた。
「大丈夫?この深い切り傷どうしたの?」
必死に話しかけるが、反応はない。心臓はまだ動いている。
美しいプラチナブロンドの髪……この国の者ではなさそうだ。服は庶民の物で、かなり汚れている。移民?何かから逃げてきたのだろうか。
実は基本的には治癒士は国王陛下の指示なしに他国の民を治すことは禁じられている。近隣諸国には治癒士がいない国も多く、その存在が広く知られてしまうと他国から狙われる可能性があるからだ。
まずいな……でも放置していたら死んでしまう。
私は彼を治すことに決めた。今は私以外誰もいないため誰にも知られずに治せる。
「頑張って、生きるのよ」
私は声と治癒魔法をかけ続け、全ての傷が塞がった。
「しっかりして、目を覚まして」
ペチペチと頬を叩き、声をかけてかけ続ける。
「……っん」
ゆっくりと瞼が開き、琥珀色の美しい瞳が見えた。
「よかったわ、貴方倒れていたのよ」
私はほっとして笑顔になる。しかし、その時に遠くから隊員達が戻ってくる声が聞こえてまずいと思った。
「あな……たは?」
「気にしないで。私は用があってもう戻らなきゃ行かない。ごめんなさい、諸事情で貴方をこれ以上助けてあげられないの」
「お礼……を……」
「お礼なんていいの。生きててくれてよかった」
でももし移民だったら、これからお金がなくて困るかもしれない。だが、私は今ほとんど現金を持っていない……はっ!と思いつき耳につけていたピアスを取る。
「このピアスの石、結構良いものだから売ればお金になる。これでしばらく生活していけると思うわ」
私は、まだ力の入らない彼の手に無理矢理ピアスを握らせてその場を立ち去る。
「待っ……て……」
その声には反応せず、足早に救護室に戻った。
「ミシェル、中にいないから心配していた……何もなくて良かった」
デーヴィド様が私がいない事に驚き、救護室の外まで探しに来てくれていたようだ。
「すみません、ちょっと物音がしたので気になって見に行っていました」
「何だって?音がしても一人で動くのは危険だ、魔物がいる可能性もあるから。今後は誰かを必ず連れて行ってくれ」
「わかりました、デーヴィド様がこちらにいらっしゃると言うことはもう討伐終了ですか?」
「ああ、もう引き上げる。一緒に帰ろう」
そうして私は隊のみんなとともに、訓練場へ戻っていった。
あの男性は大丈夫だろうか。きっと辛いことがあって他国から命懸けで逃げてきたのだろうから、どうかこれからは幸せに生きてほしいと心の中で祈りを捧げた。




