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5 ご飯は私が作ります

「皆さん、お疲れ様です。ご飯出来てますよ」


 隊員達が今日のお昼が何か楽しみとかお腹減ったと言いながら、がやがやと訓練場の傍の休憩室に集まってくる。騎士は遠征にも出るため、自分で生きていけるように自炊をしなければならない。皆さんも最低限の料理はできる訓練をしているはずなのに――今は私が治癒士(ヒーラー)としてのお仕事と併せてみんなの料理担当になっている。


 ――初めて私が第一騎士団に来た時


 まず、隊員の食事に驚いた。お肉や魚は塩胡椒で焼くだけ、野菜はサラダのみ、パンも温めずにそのまま食べていた。

 お腹を膨らませるために食べているだけ、という感じなのだ。戦地ではろくに食べられないことも多いため、食べれるだけでありがたいと思っていたらしい。


 でも!今は戦地ではないのだから食材も豊富にある!!私は美味しい物を食べることが好きなのだ。こんな食事を毎日自分も一緒に食べないといけないなんて正直苦痛だ。


 隊員は当番制で料理をするらしいので、私はそのお手伝いを申し出た。いくら女性だからといって、治癒士(ヒーラー)に料理など申し訳ないと言われたが……私が作った料理を一口食べたらみんなが目の色を変えたのである。


 分厚いポークソテーのデミグラスソースかけ

 お野菜をゴロっと沢山入れたポトフ

 ホカホカに温めたふかふかのパン


「うわぁ……飯が美味い」

「昨日まで食べてきたのは何だったんだ」


 隊員のみんなは美味い美味いと泣いて喜び、私を天才だと褒め讃えてくれたので、こちらが恥ずかしくなるくらいだった。この料理の件をきっかけに隊員のみんなとも打ち解けられたので良かった。


 ――普通の貴族令嬢は料理などはしない。私は治癒能力があるとわかった時点で、戦場に出る可能性も考え料理やサバイバル知識をみっちり教え込まれたのである。



「今日はボロネーゼと野菜のマリネ、あとはフォカッチャですよ。熱々のうちにどうぞ」


 給仕をしながらみんなにメニューを伝える。今日も皆さんもりもり食べてくださっていて嬉しい。


「相変わらず美味い、ミシェルちゃんの料理毎日食べたいな」

「この昼を食べるために訓練頑張ってるようなものだ。こんな料理上手な奥さんがいたら幸せだよな」


 この隊の皆さんはこんな風に褒めてくださる優しい方ばかりだ。料理などできる令嬢は(貴族の)結婚相手になんて向かないのに……


「お口に合って良かったです」


 私はニコニコと笑顔で答えながら、次々と来る隊員達の食事を準備していく。



「はあ……伝わらねぇよな」


 と、色んなところで隊員達からため息が漏れていたのだが、私はそれに全く気が付かなかった。


「やめとけ、団長もミシェルちゃん狙いらしい」


「本当か?あのどんな美女にも靡かない団長が?」


「朝、牽制された。触んなって」


 ヘンリーのその一言にみんなが肩を落とす。あの人相手とか勝ち目ねぇじゃん……


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