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35 プレゼント

 その後もずっとヘンリー様のペースで私は心が乱されっぱなしだった。大人の男の人ってこんな感じなのだろうか……学校で一緒だった子供っぽい男の子達とは全然違う。


「その苺のジュースも美味しそうだね、一口ちょうだい」


「はい、どうぞ」


 私は素直に自分のジュースを彼に渡した。その様子をみてなぜか彼は苦笑いをする。なんでそんな微妙な顔をするんだろうか。


「これは……心配になるな」


 そう言いながら、私のジュースを一口飲む。


「ああ、こっちも美味しいね。いや、ミシェルちゃんの飲みかけだから余計に美味しいのかな?」


 その言葉を聞いて私はフリーズする。私の飲みかけを……今……ヘンリー様が口にしてる。

 ヘンリー様が持っていた私のジュースをバッと取り返しストローをごしごし拭く。


 っくっくっく、今さら拭いても……とヘンリーさんが声を押し殺して笑っている。


「揶揄うなんて酷いです」


 私はまだ赤い顔のままムッとして、プイっとそっぽを向く。


「ごめんね、あまりにも可愛すぎて意地悪しちゃった。それに……君はもう少し男に危機感を持つべきだとわからせたかったんだ」


 彼はさっきまで笑っていたのに、急に真面目な顔になり私の頭をぽんぽんと撫でる。


「じゃあ、お詫びに良い店を教えてあげる。ミシェルちゃんが好きそうなところ知ってるんだ」


 そう言って、私の手を取り街中をずんずん歩いていく。そして、着いたのは可愛い雑貨屋さんだった。


「どれも可愛い」


 そこにはキラキラしたリボンやアクセサリー、ぬいぐるみや便箋など若い女性が好きなもので溢れていた。街のお嬢さんたちも気軽に行く店のようで、値段は手頃なのに流行りを捉えているものばかりだ。


 私は目を輝かせた。貴族令嬢らしい豪華できらびやかな装飾も美しいとは思うが、私は実は年齢相応の可愛い物も好きなのだ。

 しかも店で品物を見て直接好きに選べるなんて楽しい。


「このリボンも素敵だし、このピンも可愛いです」


「そうだね、でもこれも君に似合うと思うな」


 ヘンリーさんは私の買物に文句を言うどころか、積極的にアドバイスをくれるので楽しい。


 (男性はこのような買物は苦手だと思っていたわ……前にお兄様と来た時は早く決めてくれと呆れられていたもの)


「このリボンならシンプルだし仕事中も使えますよね、でも装飾がついたのも可愛いから捨てがたくって……」


 うーん、と悩んでいると彼は二つとも私の手から取った。


「どっちも似合うから、両方プレゼントさせて」


「えっ!いや、そんな悪いです」


「さっき揶揄ったお詫び」


 ウィンクしながら、ささっとレジへ行きちゃっかりプレゼント仕様にリボンのかかった袋をはいっ、と渡される。


「ありがとうございます」


「どういたしまして」


 この人は女の子がして欲しいことを先回りして、わざとらしくなくサラッとしてくれる。御令嬢方が彼に夢中になる理由がわかった気がした。

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