34 初めての屋台
街に来るのは久しぶりだ。沢山の屋台が出ており食べ物だったりお花だったり色々なものが売っている。人も多くとても賑わっていた。
はぐれたら危ないからと、さっと手を握られる。あまりのさりげなさに驚く間もなくそのまま街中を歩いている……は、恥ずかしいな。
「ここの焼き鳥すごく美味しかったよ」
「食べてみたいです」
「じゃあ決まり。お兄さん、スパイシーなのとトマトの三本ずつちょうだい」
ヘンリーさんは屋台に慣れているようで、店員さんに声をかけポケットから片手でコインを出し支払いをしている。
「まいどあり。あんた、こんな可愛い彼女がいて幸せ者だね」
私の頬は真っ赤に染まり、手を繋いでいるため勘違いされたのだと気がつく。誤解を解こうと声を出そうとした時……
「そうだろ。彼女の隣にいれる俺は世界一の幸せ者だよ」
ヘンリーさんは自慢げにそう言った。
「あんた顔も中身も男前だねぇ、気に入った。サービスするからまたおいで。お幸せにー!」
そう大声で言う店長に手を振りながら、ヘンリーさんは何事もなかったかのように手を繋いだまま歩き出す。
ドキドキドキ
心臓の音が他の人にも聞こえそうなほど大きくなる。彼女と勘違いされちゃった……ヘンリーさん否定せずどうしてあんなこと言ったんだろう。
ヘンリーさんはベンチに来ると、ハンカチを敷いてくれその上に私を座らせてくれた。相変わらずこういう気遣いのできる人だなと感心する。
「熱いうちにどうぞ」
焼き鳥とその店の後に寄ったフルーツジュースを差し出してくれた。しかも、私の分だけでなく彼はユリアにも同じように購入してくれている。
彼女は侍女にそのような気遣いは不要ですと断っていたが、食べて共犯になってよと笑顔で無理矢理押し付けていた。
ヘンリーさんって優しい人だな。
「買っていただいて、ありがとうございます。いただきます」
ぱくっと串にかぶりつき、熱くて口の中でハフハフしながら食べる。
「んっ!これ、タレが美味しいです」
あまりの美味しさにふにゃっと目を細めて笑顔になる。
「口に合って良かった」
ヘンリーさんは少し頬を染めて私を見つめている。
「あの、この下のお肉はどうやって食べるのですか?串が邪魔で食べられないのですが」
「ああ、それは串を横に倒してスライドさせて食べるんだよ」
ほら、と見本をみせる。
「なるほど。でも……難しい食べ方ですね」
「確かに御令嬢の食べ方ではないよね。食べにくいなら俺が残り食おうか?」
「いや!せっかくだからしてみたいです」
串を横にしてお肉をかじりながらゆっくりスライドさせて頬張る。なんとか成功したが、初めてなので上手く食べれず口の周りにタレが付いてしまった。私は唇をぺろっと舐めた。
「――まだ付いてる」
そう言って何故か急に色気をまとったヘンリー様は私の顔を覗き込み親指でタレを拭い、そのままその指をチュッと音を立てて舐めた。
その瞬間ミシェルの顔がぶわっと赤面する。
「――っ!な、な、なんで舐めるんですか!」
「ついてたから?」
そうサラッと言われ、私は何も言えなかった。




