33 ヘンリーとのお出かけ
週末、予定通りにヘンリーさんが迎えに来てくれた。馬車から降りた彼はシャツにベストというシンプルな装いだが、引き締まった体が映えて格好良い。
しかもポケットから少し見えるチーフとシャツの袖のカフスボタンは鮮やかなブルーで、さりげないお洒落が効いている。さすが元遊び人!女性が好きなポイントがわかっていらっしゃる、と心の中で拍手を送る。
「ヘンリーさん、今日はお誘いありがとうございます。隊服じゃないので新鮮ですね。とても素敵です」
ヘンリーさんは私を見て目を大きく開き、その後ゆっくりと嬉しそうに微笑んだ。
「ミシェルちゃんこそ、とっても可愛いね。凛々しい隊服姿も素敵だけど、今日の君は言葉にできないくらい素敵だよ。君と出かけられるなんて俺は幸せ者だな」
流れるような私への賛辞に、私は頬が熱くなる。
私も今日は華美な服装はせずユリア達に「可愛い町娘風」に仕立て上げられている。フリルのシャツの上に腰の位置で前がリボンで編み上げられたイエローのワンピースを着て、髪の毛はハーフアップにしておろしている。
「さあお待たせ、ミシェルちゃんのご両親にも挨拶したし、行こっか」
ヘンリー様のエスコートを受け馬車に乗り込む。私の隣にはユリアが乗り、向かいにヘンリー様が座った。
「馬車……大丈夫でしたか?我が家のでも大丈夫でしたのに」
私は気にしていたことを一番に聞く。今日彼はバーグ家の馬車で迎えに来てくれているが、ご家族と上手く行ってない彼が用意するのは大変だったのではと心配していた。
「全然大丈夫!親父に馬車貸せって手紙送ったら、勝手にしろって言われたから一番良いやつ乗ってきた。流石に乗り心地良いよね」
そう言って、悪戯っぽく笑った。私が気にしないように軽い調子で言ってくれているのだろう。
「何か食べたい物はある?」
「あ、あの。実は私、屋台の物を食べてみたくて」
私は昔からずっとしてみたかったことを勇気を出して言ってみる。御令嬢が外で食べるなどみっともないと言われるだろうか。
「屋台?そんな物でいいの」
「色々回ってみたいのです。ずっとしてみたかったけどお父様が外で食べるのは危ないし、女の子はだめだって止められてて」
「お嬢様、お気持ちはわかりますが旦那様はご心配されてるんですよ」
ユリアにそう言われて、私はしゅんと項垂れた。
「じゃあ屋台で食べよう。俺は騎士だし君が離れなければ、護衛ができるから危険はないと思うよ。あとは、このことをユリアさんが秘密にしてくれるかだね」
ユリアに向け美しい顔でニッコリ笑いながら圧をかけている。
「私はお使えしているミシェル様が幸せなのが一番です。昔から屋台の憧れは知っておりますし、可能であれば叶えてさしあげたい」
「ありがとう」
「ただし、お嬢様を必ず守って下さいませ。あと、侍女である私のことは呼び捨てでお願い致します」
「女の子を呼び捨てって俺のポリシーに反するんだよね。じゃあユリアちゃんだ」
その発言にユリアは冷たい視線をヘンリー様に向けている。その様子が可笑しくて、私は声をあげて笑った。




