31 ヘンリーからのお誘い
訓練が終わり、帰ろうとするとヘンリーさんに声をかけられる。
「街に美味しいクレープの店できたの知ってる?今週末に一緒に食べに行かない?」
「それってもしかして『フェアリー』ですかっ?」
「そうそう!さすが、ミシェルちゃん情報早いね」
この店は、御令嬢達に人気の見た目も可愛くて美味しいクレープ屋さんだ。実はとてもとても行きたかったが、予約ができないので長時間並ばなければいけない。
貴族令嬢が街に女性だけで出掛けるのは危険と言われるし、男性に無理に付き合わせるのは悪いと思って誰にも言えなかった。
「俺甘いもの大好きなのに、さすがにあの店に男一人で行きにくいでしょ。お願い!だからミシェルちゃん助けてくれない?」
困ったような顔で手を合わせて頼まれる。先輩であるヘンリーさんにここまで言われたら断りにくい。
「わかりました。私でよかったら」
「本当?良かった、楽しみにしてるね」
ヘンリーさんはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。なんか……年上なのに可愛い。
つい、あははと声を出して笑ってしまった。
「あれ?そんなに喜ぶなんて、私と出掛けるのがそんなに嬉しいんですか?」
私はわざと揶揄うようにそう言った。いつも彼にされていることの仕返しだ。
「うん、めちゃくちゃ嬉しい」
彼はそう言ってふんわり美しい顔で微笑んだ。
ドキッ
そんな言葉と笑顔は卑怯だ。ドキドキして胸が苦しくなる。
「君の父上には……なんとかして絶対に許可もらうから安心してね」
♢♢♢
「ミシェル、お前はヘンリーと仲が良いのか」
お仕事から帰ってきたお父様に部屋に呼び出され、そんなことを聞かれる。なんだかとても不機嫌そうである。
「ヘンリー様は騎士団で可愛がっていただいている先輩です」
「今日、私の執務室に……週末お前と街へ出かけさせて欲しいと直談判しに来た」
「えっ!」
「大事な娘をお前のような女たらしと出掛させるかと怒ったが、今は改心してるとしつこく食い下がってくるからミシェルに行きたいか直接聞くと言って追い返した」
「本当に最近は真面目にされてますよ。それにスイーツを食べに行くだけです」
「まさか……ミシェルは行きたいのか?」
お父様は驚いた顔を見てしている。
「行きたいです。約束しましたから」
私がそう告げると、お父様は頭を抱えた。
「ミシェル……お前デーヴィドとはどうなっているんだ。好きじゃないなら、デーヴィドには正式に断りを入れて別の人を探すから正直に言いなさい。だから相手はヘンリーでなくてもいいだろう?」
「お父様、ちょっと待ってください!」
どうして、ヘンリーさんとのお出かけがデーヴィド様の話になるの?しかも別の人を探すなんて……
私は驚いて大きな声を出してしまった。
「失礼するわ、ロバート良いじゃない。ミシェルをヘンリー様とお出かけさせてあげても」
お母様が私の声に驚いて部屋に入ってくる。
「シャーロット……可愛い娘が心配じゃないのか?」
「ユリアを同行させて、夕方までに戻ると約束させますわ。ミシェルはデーヴィド様以外の男性とお出かけしたことがないんですもの、彼を好きかどうかの判断がつかないわ。別の殿方と出掛ける経験も必要です」
長い沈黙が続く。
「……わかった。でも必ずユリアを傍におくように!!」
お母様に弱いお父様は渋々了承した。




