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【デーヴィド視点】ライバル

 キメラ討伐が問題なく終わったのは、間違いなくヘンリーの活躍が大きい。あいつは最近見違えるように真面目になり、隊内外での評判も鰻登りだ。


 女性関係も本当に全て白紙に戻したらしいと騎士団の中で大変な噂になっていた。

 だが、真剣になったヘンリーの姿に逆に男振りが上がったと夢中になる御令嬢がさらに増えた……らしい。


 今、そんなこいつが俺の執務室に来ている。


「団長、お願いがあります。隊長試験受けたいので、俺に推薦状を書いてください」


「隊長試験?お前が受けるのか」


 俺がこんなことを聞くのは、何度打診してもヘンリーは「隊長なんて面倒」とか「責任ない立場がいい」と断り続けていたからだ。


「団長何度も声かけてくれてたのに断っておいて、虫がいいのはわかってます。でも俺受けたいんです!お願いします!!」


 あのヘンリーが真剣に頭を下げている。


「お前……変わったな」


「こそこそするの苦手なんで言いますけど、俺ミシェルちゃんのこと本気で好きになりました」


 はっきりとそう言われ、俺は冷や汗が出てくる。

 ヘンリーのいつも気怠げで、やる気がなく、哀しそうだった瞳が今は生気が宿りキラッと輝いている。以前の彼とはまるで別人だ。


「彼女に相応しい男になりたいんです」


「お前は馬鹿か。彼女に惚れてる俺が、それを知って推薦状を書くと思ってるのか?」


 ヘンリーを睨みつけ低い声を出す。


「ええ、俺は実力的には隊長になって問題ないはずです。団長が私情を挟むような小さい男でないのは知っていますから」


 執務室がしん……と静かになる。

 俺は「はぁ」と重たいため息をつく。


「今日中に上に話をつけておく。私が推薦するからには、必ず受かれ」


「ありがとうございます」


「……どうしても彼女じゃないとだめなのか」


「はい。彼女を好きになってから、俺の醜くて暗くてどうしようもなかった世界が急に色鮮やかに変わったんです」


 ――ああ、それはわかる。俺も同じだ。


「彼女といると幸せで、嬉しくて、苦しくて、切なくて胸がギュとなります。俺、生まれて初めて人を好きになったんだなとわかりました」


 ――俺だってこんなに好きになったのは初めてだ。


「団長とはまだ婚約してないって聞いたから、遠慮しません。俺の手で彼女を幸せにしたい」


 その言葉を聞いて、カッと頭に血が昇る。


「俺も一歩も引く気はないからな」


 その言葉にヘンリーはふっと笑みをこぼし「俺も負けません」と言って頭を深々と下げ、執務室を出て行った。


 バタンと扉の音が大きく響く。


「あいつ……本気かよ」

 

 額をガンっと机にぶつける。


 ずっと心配していた、やる気ない問題児の部下が……初めて恋をして仕事も本気で頑張ろうとしている。本来なら上司として心から応援してやりたい気持ちだが、相手が『彼女』だとこちらも絶対に譲れない。


「彼女を幸せにするのは俺だ」


 自分に言い聞かせるように声に出して呟いた。

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