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【デーヴィド視点】酔ってる?

 食事を終え夜も更けてきたので、さすがにそろそろ帰らないといけないと思い彼女をエスコートして馬車に乗り込む。行きは向かい合わせに座ったが、帰りは近付きたくて隣に座った。


 改めて彼女の手首のあざを見て心が苦しくなる。無意識に手を伸ばし彼女の手をそっと握った。


 (あの男には後できっちり落とし前をつけてもらう。ミシェルが心配するから秘密裏に片付けた方がいいな)


「私はなぜ治癒魔法(ヒール)を使えないんだろうな」


 あの男が触ったところを上書きしたい。そして少しでも痛みが和らぐようにと祈りを込めて、ちゅっちゅっと優しく何度もキスを繰り返した。


 しばらくそうしていると急にミシェルがうふふふふと笑い出したので、俺は顔を上げる。


「デーヴィド様が助けにきてくれた時、すごーくすごーく格好良かったの!惚れちゃいそうデス」


 彼女からの急な「惚れる」発言に俺は驚き、フリーズしてしまう。ん?しかし、いつもと喋り方が違う……残念だが、普段の彼女ならこんな言葉は言ってくれないだろう。


 ミシェルの頬がピンクに染まり目がとろんとして色っぽくなっている。これは完全に酔ってるな……


「私だけの騎士(ナイト)様みたいで嬉しい」


 ミシェルはフニャっと笑顔になり、俺の首に勢いよく手を回し抱きついてくる。しかも首にくんくんと鼻を当てながら「デーヴィド様の匂い好き……落ち着く」ととんでもない発言をした。


 俺は耐えられなくなり、同じようにミシェルの首筋に顔を埋める。ああ、とてもいい匂いがする。キスマークをつけたいが何とか我慢しペロリペロリと首を舐めた。


 あっ……ひゃっん


 驚いたのか彼女から甘い声が漏れる。

 ゾクリと自分の体が熱くなる。


 (だめだ、だめだ。落ち着け、冷静になれ。酔って朦朧としている彼女にこれ以上のことはしてはいけない……そうじゃないと絶対に後で俺自身が後悔する)


 俺はもう一度だけ首にちゅっとキスをし、理性を総動員して体を離した。我ながらよく我慢したと思う。


 すると、俺の葛藤など知らない彼女は、今にも瞼を閉じそうになっていた。


「ミシェル、眠たかったら寝てもいいよ。着いたら起こしてあげるから」


「そんな……わる……いです」


 その後、むにゃむにゃと何か言っていたが俺の肩に頭を預けそのまま寝てしまった。


 彼女をそっと肩から膝の上に移動させる。こうして寝顔を見るとあどけない少女のようだ。


 くぅくぅと寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている彼女を見てとても幸せな気持ちと、こんなに安心されて俺はやっぱり男扱いをされていないのではと不安が出てくる。


「う……ん……デーヴィドさ、ま」


 夢で俺の名前を呼んでくれている。サラサラの髪を撫でてあげると気持ちよさそうに微笑んだ。

 あまりにも可愛いすぎて困る。


「これはある意味拷問だな」


 ジュリア嬢には悪いが、今日久々に再会しても特に何も心を動かされなかった。むしろ、今さら俺に話しかけるなど、邪魔だなとさえ思った。


 まぁ……そのおかげで彼女は俺を意識してくれたのは嬉しいが、やはりそれが原因で怪我をさせたのは最悪だ。


 我ながら酷い話ではあるが恋人だった当時も、淡白な付き合いをしており俺は冷たく酷い男だったのではないかと思う。

 

「ミシェル、君だけを愛してるんだ。お願いだから……俺を選んでくれ」


 彼女の柔らかい唇を指でそっとなぞり、額に優しくキスを落とした。

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