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27 振り向いて

 レストランに着き、デーヴィド様は慣れたようにメニューを注文していく。何か食べたいものは?と聞かれたがお任せすることにした。


「お酒は……どうする?ミシェルは飲めるのか」


 我が国では十六歳から飲酒が認められており、私は弱いがお酒は何度も飲んだことがある。なぜか家族からは外ではあまり飲むなと言われているが、今は少しアルコールを入れたほうが自分の気持ちに素直になれる気がする……


「あの、強くはないのですが飲めます。デーヴィド様がもし飲まれるのであれば、軽めなお酒を私もいただいてもいいでしょうか」


「もちろん。では私には『バーボン』をロックで、彼女には『アプリコットフィズ』を。彼女のアルコールは控えめで願いするよ」


 ウェイターがなぜか意味あり気にデーヴィド様をじっと見つめている。彼はその視線に小さく頷いて微笑んだ。


「甘くて美味しいです」


「それは良かった」


 この時の私は『振り向いて』そんな意味が込められたカクテルだと知らなかった。だってまだそんなこと習っていないし、そもそもお酒に意味があるなど思ってもいない。


 ウェイターの「カクテル合ってます?彼女はまだ貴方の恋人じゃないの?片想い中なんですか?」という視線だったことに私は全く気付くことはなくごくごく飲んでしまっていた。



「……ミシェル、その手首はどうしたんだ」


 デーヴィド様が驚き眉を顰めている。私は咄嗟に手首を隠す。あの男に掴まれた時に赤くあざになってしまっていたことを忘れていた。


 外は暗かったので彼にわからないよう誤魔化したが、レストランのような明るい場所では隠しようがなかった。


 デーヴィド様は私の近くに来て、隠していた赤くなった手首をそっと両手で包んだ。


「怪我に気が付かずすまなかった。痛いだろう」


 彼は苦しそうな悲痛な声をしている。


「大丈夫です、家に帰ればお兄様かお父様に治癒魔法(ヒール)で治してもらえますから」


 このような時に、自分自身には魔法が使えないことがとても不便だ。


「治るとか……そう言う問題ではない。あの男!やっぱり息の根を止めておくべきだったな」


 デーヴィド様が本気で怒っているため「貴方には、もうあんな低俗な方に関わって欲しくない」と必死で止めた。


「私は君が一番大切だ、君を傷つける人は誰であっても許さないから」


「あ、ありがとうございます」



 その後少し気まずかったが、料理を食べながらデーヴィド様があえて他愛のない話を振ってくれたので、だいぶ自然に話せるようになった。やっぱりこの人はとてもスマートで大人な男の人だ。


 でも、本当に大事なことをちゃんと話さないといけないわ。私は彼にとても迷惑をかけたのだから。お酒も二杯飲んで、少し酔ってきた私は今なら正直な気持ちが言えるかもしれないと覚悟を決めた。

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