25 観劇②
劇の後、お食事に誘っていただいたので席を後にする。私ももっと彼と一緒にいたかったので、その提案は嬉しかった。そんな時、ロビーで一人の妖艶で美しい女性に声をかけられる。
「あら、デイヴ。お久しぶりですわね、相変わらず貴方は素敵ですこと」
「……ジュリア」
「貴方が観劇など珍しいわね。隣の可愛らしいお嬢さんのお付き合い添いかしら」
ジュリア様は私をチラリと見て、子どもっぽいとでもいうように鼻でフッと笑った。彼女は公爵家の御令嬢であり、以前デーヴィド様と噂のあった方だ。とてもセクシーで大人で美しい……子どもの私とは比較にならない程素敵な女性だなと思う。
ズキッ
デーヴィド様には私とよりお似合いの方がたくさんいらっしゃるんだと実際に目の当たりにするとなぜか胸が苦しくなる。
彼が『デイヴ』と愛称で呼ばれているのも……親密さを見せつけられているようで、なんだかもやもやしてしまう。
「私がどうしてもと誘ったのだ。大切な彼女を傷付けるようなことを言うのはやめてくれ」
「嫌だわ、デイヴ真剣になっちゃって。うふふ、貴方が少女趣味だなんて知らなかったわ。どおりで私とは上手くいかないはずね」
「年齢など関係ない、彼女だから私は愛を乞うている。それに君も、もう婚約者がいるのだから愛称で呼ぶのはやめてくれ」
失礼する……と彼は怒ったような口調でそう告げ、私の肩を抱いたままその場を去った。
(少女趣味……そうか年齢差があるから私と並んでいるとデーヴィド様が悪く言われてしまうんだ)
私はジュリア様の言葉に傷付いていた。明らかに元気がなくなった私をデーヴィド様は心配し、何度も申し訳ないと謝ってくれた。
「すまない、嫌な気持ちにさせた」
「いえ……ジュリア様は素敵な女性ですね」
「ミシェルの方がよっぽど素敵だよ」
「彼女とお、お付き合いされていらっしゃったのですか?」
私はこんな失礼なことを聞いたらだめだと思いながらも、つい気になって口に出してしまう。
「家同士の繋がりで断れず、半年くらいだけね。だが、若い頃の……だいぶ昔の話だよ」
デーヴィド様は少し言いにくそうにしていたが、誤魔化さずきちんと答えて下さった。
わかっていたことだ。十歳も年上の男性が今までお付き合いした女性がいることなど当たり前。それを嫌だと思う私がどうかしている。
世間的にはデーヴィド様はとっくにご結婚されている年齢なのだから。
「今は君だけが好きだよ」
でも彼にはたくさんの経験があるのに、私には何もないことが急に不安で恥ずかしくて嫌になった。
こんな私を彼は本当に妻にしたいのだろうか?
「あの、私やっぱり……今日は帰ります」
私はデーヴィド様の腕をパッと急に離し、人混みに紛れて階段を駆け降りた。
「ミシェル!待ちなさいっ……ミシェル!!」
デーヴィド様の焦った声が聞こえるが、振り向かない。いつもなら彼にすぐに追いつかれるだろうが、今は観劇を見終えた人たちで溢れかえっており私は上手く人混みをすり抜けた。




