【デーヴィド視点】香り
ルーカスは隊員達に帰ってきたのか!と歓迎されていた。人懐っこい彼は先輩後輩問わずみんなから人気者だ。
俺は朝礼でミシェルが休みのことをみんなに伝えた。
「今日はミシェル嬢が体調不良ということで、休みだが、ルーカスが遠征を終えてそのままこちらに来てくれた。遠征に行っていた騎士隊員達は明日から合流するから、そのつもりでよろしく頼む。以上」
「はい」
返事のあとに「ミシェルちゃん体調大丈夫かな」と様々な心配する声が聞こえる。
「みんなーっ。心配かけてごめんね!ミシェルは俺が不在の間頑張りすぎちゃったみたいで熱が出たんだ。もう体調戻ってるし、明日からまたよろしくお願いしますね」
ミシェルを心配する隊員達にルーカスが明るく話している。
「……で、ヘンリーそのみっともない顔はなんだ」
「あはは、やっぱり気になっちゃいます?」
あまり俺からヘンリーに話しかけたくはないが、左頬に痛々しい引っ掻き傷と腫れがある。
「女だろ。ルーカスに治してもらえ」
俺はため息をつく。女遊びをやめないこいつに呆れつつも、やはりミシェルにはつい抱きついただけなのかもしれないと安心した。いや、つい抱きつくなど許せないが。
「今、女関係全部清算しようと思ってるんですよ。別れ話したら女の子怒っちゃって……でも俺が悪いんで、この痛みは治さず受け入れます」
ヘラリと笑いながらそんなことを言い出すので、すごく……嫌な予感がする。
「お前が清算?珍しいこともあるもんだな」
「……本気で好きな女ができたんです。仕事もこれからは真面目にしますからね」
ニヤッと笑って手をひらひら振りながら去っていく。本気で好きな女って……ミシェルのことなんだろうかともやもやした気持ちでいっぱいになった。
♢♢♢
疲れた――いつもは彼女を見ただけで心が癒やされるが、今日は会えない。もう早く自室に戻ろうと足早に宿舎に向かう。
「デーヴィド様」
名前を呼ばれて振り返る。
「私、ロレーヌ家の執事ダニエルと申します。急にお声がけして申し訳ありません。当家御息女のミシェル様よりお手紙を預かっております」
恭しく頭を下げながら、手紙と贈り物を差し出される。
「ご丁寧にありがとうございます」
お礼を言って、すぐに部屋に入る。ミシェルから手紙の返事がきた。それだけでとても嬉しい。さっきまで凹んでいたのに、今はとても幸せだ。
ドキドキドキ
ペラっと手紙を開く。昨日のことのお礼と……週末の観劇が楽しみだと書いてあった。愛の言葉が書かれていないのは、少し寂しいが予想はしていた。
でもミシェルはデート楽しみにしてくれてる。その事実にニヤニヤしてしまう。そうだ、観劇の時に着てもらうドレス贈ろう。
その時、手紙からフワッといい匂いがする……いつものミシェルの香りだ。それを理解した瞬間、全身にぶわっと熱がこもる。
「これは……まずいな」
色んな意味でまずい。彼女がすぐそばにいるような感覚になり、心も体もなんだか落ち着かない。
気を取り直して、美しくラッピングされた袋のリボンを開ける。俺のイニシャルが刺繍されたハンカチが入っていた……なにこれ、嬉しすぎる。御守りにしていつも持っていよう。
「あぁ、やっぱり好きだな」
目を閉じて手紙とハンカチをぎゅっと抱きしめた。




