22 薔薇の意味
「ミシェル、顔色がよくなったわね。そういえばデーヴィド様からお見舞いが届いているわよ」
お母様が微笑みながら私の部屋に入り、真紅の薔薇の花束と手紙を持ってきてくれた。
「お母様、ご心配をおかけしました。わぁ、花束綺麗ですね」
「デーヴィド様は貴方にかなりご執心みたい。ミシェル、女冥利に尽きるわね」
お母様は楽しそうにうふふと笑っている。
「え?なんでこの花束だけでそんなことがわかるんですか?」
私は意味がわからず、首を傾げる。
「二十四本の薔薇は『一日中あなたを想っています』という意味よ」
それを聞いて、私の顔は火が出るほど真っ赤になって恥ずかしくて下を向く。
「よかったわね」
私はデーヴィド様が贈ってくださった花束を抱きしめたまま動けなくなってしまった。
「お嬢様、薔薇はお部屋に飾りましょう。ご用意してきますね」
ユリアは私から花束を受け取り、花瓶にさしてくれた。
「ユリア、これからはミシェルに贈り物の意味なども教えないといけないわね。せっかくくださっても気付かないと殿方が可哀想だもの」
お母様は悪戯っぽく微笑んでいる。我が母ながらとても可愛らしい。
「そうですね、奥様。恐れながらお嬢様は男女の機微に疎くていらっしゃるので、学ばれるとさらに魅力が増されると思います」
「では決まり。そうしましょう」
私はその後、花言葉の意味やドレスの服の選び方(みんな意中の方の瞳の色や髪色にするらしい、知らなかった!)など色々と学んだ……でもこれは一握りでまだまだ山ほどあるらしい。
今回の手紙のお返事はお嬢様の愛用していらっしゃる香水を垂らすといいですよ、きっと喜ばれますとユリアにアドバイスを受けた。
「手紙に香りを……」
そんなこと考えたこともなかった。世の中の御令嬢達はこのようなことをみんな知っているのかと驚き、自分の恋愛の無知さが恥ずかしくなった。
「でも、明日会うしお返事はいるのかしら?」
「何言っているんですか!絶対に必要です。きっと訓練が終わる時間に合わせて、執事のダニエルが騎士団の宿舎に届けてくれますわ」
お一人でゆっくり読まれたいと思うので、少し席を外しますねとユリアは嬉しそうに部屋を出て行った。
パタン
部屋に一人になったので、ゆっくりと手紙を開く。
私の体調を気遣う文章から始まり、しんどい時は言って欲しい、君に何かあれば私は耐えられないと書いてあった。その後は……好きだ、愛してるという愛の言葉の羅列。あまりの恥ずかしさに手紙をすぐに閉じた。
「こんな手紙に返事などできないわ」
悩んだ私は返事を書くのにかなり時間がかかってしまった。結局は昨日のお礼と迷惑をかけたことのお詫び、あとは週末一緒に観劇を見るのを楽しみにしているとだけ記した。
愛の言葉は私にはハードルが高すぎて書けそうにない。それに自分がデーヴィド様を愛しているのかまだよくわからないのだ。
花束のお礼にハンカチに彼のイニシャルを刺繍したものを用意した。そして、私が毎日使用している香水を手紙に数滴垂らし、封をしてユリアに預けた。




