【デーヴィド視点】本気だ
「ルーカス・ド・ロレーヌ無事帰還致しましたこと、第一騎士団長にご報告申し上げます」
ルーカスが長期の魔物討伐を終え戻ってきたので、俺に報告と挨拶をしに来ている。
「ああ、よく戻った。今回は大変な討伐だったと聞いているが、ルーカスのおかげで死傷者はいなかったそうだな。礼を言う」
「ありがたいお言葉感謝致します」
「戻ったばかりなのに早々に仕事に出てきてもらって悪いな」
「いえ。団長、昨日は妹がお世話になりました。それに上に掛け合って彼女専用のシャワー室も作っていただいたとお聞きしました」
「シャワー室のことは今まで私の配慮が足りず、悪かった。それよりミシェルの体調はどうだ?」
ルーカスは俺がミシェルを呼び捨てにした時に眉をピクッと動かし反応したが、すぐに表情を戻す。
「熱は下がりましたが、今日一日は休ませます」
「ああ、それが良い」
ミシェルに会えないのは寂しいが、早く元気になって欲しい。熱が下がったと聞きほっとした。
「団長、ミシェルのことは本気ですか?求婚したと聞いていますが、もし軽い気持ちや遊びであればすぐに手を引いていただきたい」
ルーカスが俺をギッと睨みながらそんなことを聞いてくる。
「もちろん本気だ、彼女を愛している」
俺はルーカスをまっすぐ見てしっかりとそう伝えた。
「そうですか……それならば良いです。妹は自分の魅力をわかっていないので心配なんです」
「前から疑問に思っていたが、彼女はなぜあんなに自分はもてないと誤解しているのだ?」
俺はずっと不思議だった。あの見目の良さと親しみやすい性格、優しい笑顔……彼女を好いている男は周りに沢山いるのに気が付かないのだ。
「昔から大人の男達にはもててましたよ。でも、彼女の誤解の理由は、父が大量の釣書をミシェルに見せたことがないからです。治癒士と血縁になりたいだけの下衆な奴らからの申し込みも多いので彼女に見せていたらキリが無い。釣書を見て彼女が変な男を気に入っても問題ですからね。だから、父のお眼鏡に適わない釣書はほぼすぐに燃やされてました」
「君達のお父上らしいな」
俺はそれを聞いて自分はよくお見合いまでたどり着いたものだと思った。
「そして、学生時代は……女が働くなど淑女のすることではないと批判する馬鹿でガキな後継の長男も多く、戦場に出るような女は妻に相応しくないと噂が回っていたようで。同年代の男からのアプローチは積極的には無かったのと……あっても本人が鈍くて気が付いていなかったというわけです」
ルーカスは噂を思い出して怒りが込み上げてきたのか、持っていた書類をぐしゃっと握る。
「俺は、ミシェルに女性として普通に幸せになってもらいたいんです……能力のせいで辛い思いもしてる分余計に」
「私が幸せにしたいが、残念ながらまだ返事はもらっていない。ここでは彼女に群がる男は多いのに、どうしたらいいか悩むよ」
俺はがっくりと肩を落とす。
「ははは、団長のアプローチでもなびかないなんてミシェルは強者ですね。さすが俺の妹だ」
ルーカスは楽しそうにゲラゲラと笑っている。
「こっちは笑い事じゃないんだがな」
「正直、俺は妹が幸せなら相手は誰でも良い。貴方でも……別の男でもね。でももし彼女を傷付けたらいくら団長でも許しませんからね」
不敵な笑みを浮かべ俺に圧をかけて「ではまた後で」と執務室を去って行った。




