20 治癒士は万能ではない
「治す側なのに、倒れるなんて。私はまだまだ未熟ですね」
私は自己嫌悪に陥る。自分が倒れたら怪我人を治せなくなるので治癒士は体調管理がとても重要だ。
治癒魔法は万能ではない。さまざまなルールがある。
一、治癒士は自分の治癒魔法を自分自身に使えない。
ニ、治癒魔法は外傷のみに効く。病気には効かない。
また、外傷であっても切られた腕を戻すなど、一度無くなったものを治すことはできない。
三、死んだ者を生き返らすことはできない。
四、治癒士は自分の魔力と体力を減らし治癒魔法を使う。
魔力の消費は傷が深いほど多くなる。
五、治癒士の魔力がゼロになると意識を失う。場合によっては命を落とす危険もある。
「ニコラに聞いたが、今日は朝から重症の怪我人が多かったそうだな。こちらが君に無理をさせすぎたんだ、気付いてやれずにすまなかった」
「いえ、完全に私の力不足です。魔力はまだまだ残っているのに倒れるなんて」
「力不足なんてことはない。ミシェルはいつも頑張っているから、たまにはゆっくりしたらいい」
彼の優しい言葉に涙が出そうになる。デーヴィッド様は私の毎日の頑張りをいつもみていてくれているのだ。
「いつも君は私達を治してくてるのに、こんな時私は君に何もできないのがもどかしいよ」
「デーヴィド様は私をここまで運んでくださったではないですか」
「そんなの当たり前のことだ」
「当たり前じゃないです……貴方は私をちゃんと一人の女性として扱ってくれるのが嬉しいんです」
「それも当たり前のことだ。私にとって君は大事な女性だから」
私はその言葉にまた頬が染まってしまう。
「私は昔……ある男性から背が高くて戦場に出るような野蛮なやつは女じゃないと言われましたから」
デーヴィドはあからさまに眉をひそめ、怒っている。
「そいつは大馬鹿だ!そんな男の言うことなど一切気にしなくていい。野蛮だと?男でも恐ろしい戦場で治癒士として働く君を私は尊敬している。君はどこからどう見たって素敵な女性だよ」
私は彼にそう言ってもらえて、昔の嫌な思い出が浄化された気がした。その言葉に安心してしまったのか、熱がまた上がったのか私はうとうとして瞼が重くなる。
「ミシェル……ゆっくりおやすみ」
彼の声が微かに聞こえ、私の額に何か温かいものが一瞬だけ触れた気がした。
「愛してる」
大きな手で頭を撫でられ、安心する。ふわふわした幸せな気持ちで意識が途切れた。




