19 熱
今日は午前から治癒魔法を使いすぎており、少しだるかった。でも迷惑をかけるわけにはいかないと午後の訓練もなんとかやり遂げた。
家に帰って早く休もうと思ったが、デーヴィド様の姿が見えたのでお昼行けなかったことを謝ろうと声を掛けた……が、昼のことを聞かれヘンリーさんに告白されたことを思い出し焦ってしまった。なんとなく、求婚してくれたデーヴィド様には言いにくい。
そして話している内に頭がボーっとしてきた。ああ、だめだ。くらくらする……
「熱があるじゃないか!どうしてすぐしんどいと言わなかった?」
デーヴィド様に額に手を当てられ、熱があると指摘された。そしていきなり横抱きにされて驚いた。普通の御令嬢とは違い、背も高くて重たい私を抱き上げるなんて!すぐに下ろしてくれと頼んだ。
ミシェルは羽のように軽い
背も私よりだいぶ小さい
そう言って彼はそのまま医務室のベッドに連れて行ってくれた。
背の高い私を簡単に抱き上げて……抱きしめられた彼の胸も腕も大きくて筋肉質でドキドキしてしまう。デーヴィド様に女の子扱いをされ、私の熱は更に上がってしまった気がする。
『あんな背の高い女は嫌だ』
『いくら治癒士とはいえ、戦場に行くような野蛮な女と付き合う男などいるのか』
昔、密かに憧れていた御令息に自分がそんな風に陰で悪口を言われているのを知ってショックを受けたことがある。
――ああ、私はやっぱり女として見られていないのだと哀しくなり、部屋で一人で泣いてしまった。
後でわかったが、彼のお目当ての御令嬢が隊服を着た男装の私の熱心なファンだったので嫉妬して悪口を言っていたらしい……しょうもない男である。
そんな男に一瞬でも憧れていた私はどうかしていた。しかし、その言葉は私に心に傷を作った。
(こんな私を受け入れて、女の子として好きになってくれる人はいないんだろうな)
――嫌なことを思い出してしまったな。
重たいまぶたをゆっくりと開いた。頭がぼーっとしている。
「気がついたか。気分はどうだ?」
デーヴィド様が私の手を握ったままベッドの横に座っている。
「デーヴィ……ド様?」
「君は訓練の後、熱を出して倒れた。ここは医務室だよ」
それを聞いて、倒れる前にしてもらったお姫様抱っこを思い出した。また顔が熱っぽくなる。
「まだ顔が赤いな?無理をしてはいけないよ。さっきロレーヌ家に連絡を入れたからもうすぐ迎えが来る」
「ご……ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「何も迷惑ではない。だが、心配した」
デーヴィド様は少し困ったような顔で私の髪をひと撫でした。




