15 一人のご飯は好きじゃない
今日は朝から重症の怪我人が沢山出て、治癒魔法を何度も使っていた。疲れたが、そろそろ昼食の準備をしないと――
その後、当番の隊員達と一緒にテキパキとお昼を作りみんなに給仕をする。相変わらず美味しい、美味しいと喜んでくれるので私の疲れも少しはましになる。
一通り終わり、休憩室には私以外居なくなった。そろそろ団長にお昼を持って行こうかな。本来なら上司である彼に一番先に食事を届けるべきだが、私と一緒に食べたいと言われるため、いつも遅い時間になってしまうのだ。
彼は仕事の都合上遅めの方が良いと言ってくれるが、たぶん優しい嘘だろうなと感じていた。
「あれ、もうお昼終わっちゃって食べれないかな」
ヘンリーさんがとても残念そうな顔で休憩室に入ってきた。
「まだ大丈夫ですよ。今日は遅かったですね」
「上層部に呼び出されてお説教。前線を退いたジジイ達のくせにうるさすぎる」
ドサっと椅子に座り、心底嫌そうな顔で不貞腐れている。
彼はあまり上層部からは好かれていない。不真面目そうな言動や華やかな女性関係、着崩した隊服に長い髪……それなのに剣の実力は高いので頭の硬い年配の上層部の皆様達は余計に腹が立つようなのだ。
「ああ、それは辛かったですね。今、ご飯温めますからね」
「ねえ、ミシェルちゃん一緒にご飯食べてくれない?俺一人で飯食うの苦手なんだよね」
懇願するような目で、真顔でそんなことを言うので少し戸惑ってしまう。一人で食べるのが苦手というのはいつもの冗談にはどうしても思えなかった。
「一緒に食べてもいいですけど……先に団長にお昼届けて来てもいいですか?」
「あの人いつもこんな遅く食ってるの?」
「いつも私と食べているのでこの時間なんですよ」
「なんでミシェルちゃんと団長が二人で昼食べる必要があるの?付き合ってないんだよね」
そういえば何故なのだろう。習慣化して何も思っていなかったが、確かに変である。
「付き合っていません。ですが、以前団長に私ともう少し話す時間が欲しいと言われましたので最近はそうしていました」
ヘンリーさんがなんだそれ?と納得していない顔をしているのがわかる。
「と、とりあえず団長の分渡してきます」
そう言ってお昼を持って行こうとした時に、ヘンリーさんがそっと私の腕に触れる。
「お願い、待ってるから戻ってきてね」
哀しそうな目で懇願してくる。こんな人を一人にさせるのは心配だなと思い、すぐに戻ると告げ団長の執務室へ向かった。
廊下を歩いていると、副団長に会った。今から二人で昼食なのですね、と声をかけられたが今日は私は用事があって団長と一緒に食べられないと説明した。
「ミシェル嬢が急いでいるなら僕が食事を届けますが?丁度団長に用事がありますし」
上官に頼むなど申し訳ないとお伝えしたが、ついでですと引き受けて下さった。私が行けないことを詫びていたと伝言を頼み……足早に休憩室に戻った。