12 初デートの約束
なんだかんだで今日もお昼を団長と一緒に食べている。
「昨日のことは他言しないように。ミシェルはニコラに入口に立ってもらいながら、共用のシャワーを使用したことになってる。誰かに何か聞かれたら話を合わせて答えるように」
そう何度も念を押された。もしや彼には私が部屋に入ったことを知られたくない女の人でもいるのだろうか?
確かに自分が団長の彼女だったら、彼の部屋に部下の女がシャワー浴びに来るとか最悪よね。
「大丈夫です。(貴方の彼女に)誤解を招くようなことはしませんから」
ニッコリ微笑んで返事をする。団長は私の返事を聞いてほっとした顔をした。
そのまま昼食を食べながら、会話を続ける。君は休みの日は何をしてる?と聞かれたため観劇が好きだと答えた。その言葉に団長はニヤリと笑い顔を上げた。
「そういえば『青い月』のチケットがあるんだ。興味があるなら私と一緒に行かないか?」
「え!あの人気すぎてチケットが取れないと有名な『青い月』ですか?私一度行ってみたかったのです」
「じゃあ、今週末に行こう。ミシェルのお父上には私から許可をいただいておくから」
「わあ、楽しみです!」
私は嬉しすぎてつい興奮してしまう。笑顔の私を見て団長も嬉しそうに微笑んでいる。
はっ!つい喜んで行くと言ったが、この人彼女はいいのかしら?
「あの、でも団長は私と二人きりで出かけていいのですか?周りに誤解をされると困ると思うのですが」
「団長ではなくデーヴィドな。誤解されると困るというのは、ミシェルが俺と二人で出かけたと他の男に思われたくないということか?」
傷付いたような哀しい声で団長が質問をしてくる。いや、何を言ってるのか?私が言いたいのは逆だ。貴方が彼女に誤解されると言いたいのに伝わらない。
「デ……デーヴィド様、逆です。私と二人で出掛けたとわかれば貴方をお慕いされている御令嬢が涙を流されますわ」
「私は君以外の女性には興味がないからどう思われてもいい。君の愛だけが欲しいのだから」
私はその言葉に照れて下を向く。きっと団長はかなりモテるため口も上手いのだ。だって、今まで彼と噂になった歴代の恋人はそれはそれは大人で素敵なお姉様達ばかりなのだ。
それなのに、公爵家のために幼稚な私に興味のあるふりをして結婚しないといけないだなんて団長は可哀想。やっぱりあの話をしなくては。