【ニコラ視点】慎重になれ
今回もニコラ視点です。
「お前、ミシェル嬢を自室に連れ込んだな!このケダモノ」
デイヴの執務室に乗り込み、机をバシッと叩きながら彼女を自室に連れ込んだであろう彼を責める。
「な……んで知ってる!」
「かまかけたんだよ。まさか本当に連れこんでたとは」
僕は自分の予想が当たり、がっくり肩を落としため息をつく。
「ニコラ、性格が悪いぞ。しかも連れ込んだのではなく、シャワーを貸しただけだ」
僕はデイヴに軽蔑の眼差しを向ける。
「俺は誓って何もしていない!彼女が男だらけの共用のシャワーを使っていると聞いて驚いたんだ」
「それについては兄のルーカスから改善要求が出ていたんですが」
それはこんな内容だ。
男達の目が気になるし、未婚の妹に何かあっては困るため彼女専用の部屋か女性専用のシャワー室を離れた場所に作って欲しいと。だが、上層部のうるさい奴らがいくら女性とはいえ新人にいきなり高待遇すると規律が乱れると却下された。
ルーカスは妹をなんだと思っているのかと怒り、父親から話をつけて要望を通してやると言ったがミシェル嬢は「大丈夫。私だけ特別なのは嫌だ」とそのままになった。団長にもお父様にも迷惑をかけたくないので言わないようにと。
「……というわけです」
「すぐに俺に相談してくれていれば。それにミシェルのお父上が娘がそんなことになっていると知ったら怒り狂うぞ」
「そうでしょうね、もう騎士団から治癒士を全員引き上げるとか言い出しそうですね」
「上層部には俺が話をする」
彼は怒りを込めた声ではっきりそう言った。
「でもそれとこれとは別です。ルーカスに自分が不在の時のシャワーは妻帯者の僕が必ず見守るよう頼まれていたのに、ミシェル嬢がいつまでも現れないから焦りましたよ」
「そうだったのか。でもなんでお前にそんな役をさせなきゃならないんだ」
デイヴは僕にすら嫉妬するようだ。
「彼女があの場所を使っていることは隊員達も知ってますからね。彼女は血だらけだったのに、共用のシャワー室に来ない。一体どこでシャワーを浴びて帰ったのか……と、かなりざわついてました」
それを聞いたデイヴは頭を抱えて項垂れている。
「お前は男だからいいさ。でも、部屋に入ったことを知られて、悪く言われるのはミシェル嬢だ。本当は何もなくても下世話なこと言われることくらいわかるだろ?大事ならもっと慎重に動け」
「悪かったよ……俺の考えが甘かった」
「とりあえず、みんなが居なくなった後にミシェル嬢が共用のシャワー室に来たということにしておいたから」
「ニコラ、ありがとう。いつもフォローばかりさせてすまないな」