【デーヴィド視点】新婚旅行⑤
「新婚旅行は温泉に行く」
そう言った俺にジャンとライラは冷たい眼差しを送ってくる。
「ミミが希望したんだ!俺が言い出したんじゃない」
俺は自分の下心を隠すように言い訳をする。
「無難に景色のいいところで、スイーツの美味しい高級ホテルのスイートルームとかに泊まった方がいいんじゃないんですか?」
ジャンはそんなことを言う。
「そうですよ、若奥様のご希望とはいえ……若旦那様が期待されているようなことはないと思いますよ」
「そうですよ、きっと若奥様は広いお風呂に入りたいな……くらいの気持ちでおっしゃられたのであって、若旦那様と一緒に温泉に入りたいとかイチャイチャしたいとか全く考えておられないと思いますけど」
容赦のない使用人達の声が俺の胸を抉る。わかってる……わかっているけど新婚旅行なんだし少しくらい期待してもいいではないか。
「なんと言われても行くから!」
「はいはい、嫌われずにちゃんとお二人で帰ってきてくださいね」
「わかっている」
♢♢♢
そう言ったものの、やっぱり俺は二人で温泉に入りたくて彼女を誘う。予想はしていたが体を洗うのは断固拒否され、湯船の中でもかなり距離をとられて警戒されている。美しい彼女の体を横目で見ると、もっともっと近付きたくなる欲が出てくる。だが、こんな気持ちは俺だけだろう。
はぁ……やはりあいつらの言う通りだったかな。だめだな俺は。数日前に初めて結ばれたのに、いきなり多くを求めすぎた。彼女は困っているし、きっと嫌だろう。
俺は先に温泉を出て一旦冷静になろうと思ったが、彼女に「行かないで」と腕を掴まれ驚いた。
「私も本当はデーヴィの傍にいたいの。でも近くにいるとドキドキしちゃって胸が……痛くて」
彼女のその告白に俺はたまらなく嬉しくなる。恥ずかしがっていただけなのか。しかもむしろドキドキしてたから離れてたなんて……ああ!たまらなく可愛い。
しかも、俺に嫌われているかもと不安になっていたみたいだ。何があっても俺が彼女を嫌うことなどないのに……
しかも彼女から「大好き」とキスをしてくれた。嬉しくて舞い上がりそうになる。俺は夢中で彼女の唇を何度も吸った。
くたっと彼女の体の力が抜け、俺の肩にしなだれかかってくる。これ以上ここにいたら、襲ってしまいそうだ。さすがにそれはだめだと理性を総動員し、温泉を後にした。
それから晩御飯を食べ終え、彼女はご機嫌にお酒も飲んでいる。普段なら止めるところだが……旅行中くらい好きにさせてあげようとそのままにしていた。
「デーヴィ!旅行楽しいですねぇ……ふふふ」
彼女はしっかり酔っ払った様子だ。そして、私に抱きついてきた。
ああ、困ったな。ミミからは風呂上がり特有の良い匂いがしている……さっきなんとか落ち着かせた男の欲が再度熱を持つ。
「好き……大好きです」
俺の体に顔をすりすりしている。もう、これは限界だ。ミミが可愛すぎるのが悪い。
「今から君を愛したい」
「ふふ、嬉しい……いっぱい……愛して」
頬を染めながらそう言った彼女を見て、俺の頭の中で何かがプチっと切れる音がした。これは……もう我慢できない。うん、煽ったミミにも責任はあると思う。
余裕のない俺は彼女を抱き上げ、少し乱暴にベッドに下ろす。そして、すぐに彼女の唇を何度も貪る。
「んっ……ふっ」
甘い声が聞こえて、俺は嬉しくなる。彼女が感じる部分を丁寧になぞっていくとミミの体がブルっと震えた。
「ミミ、気持ちいい?」
「んっ……いい」
彼女がこんなことを言ってくれるなんて。ついつい頬が緩んでだらしない顔になってしまいそうだ。そして、素直に嬉しい。
「よかった。もっと気持ち良くなって」
彼女の体をとろとろに蕩けさし、俺自身も信じられないくらい気持ちが良くて頭がおかしくなりそうだった。酔った彼女は、いつもより積極的でその可愛さと色っぽさを前に俺は我慢などできるはずがなく、何度も熱を放った。
♢♢♢
「んんっ」
彼女が目を覚ましそうだ。昨日は二人ともかなり盛り上がってそのまま寝てしまったのでお互い……その……汗とか他のものでベタベタのままだ。
「デーヴィ……?」
「おはよう、ミミ。身体は平気?」
俺は彼女の額にキスをしてそう尋ねる。彼女はお互い何も身にまとっていないことに狼狽えている。
「少し怠い程度。大丈夫……」
「昨夜のこと覚えてる?」
「ところ……どころ。でも恥ずかしいから思い出したくないかも」
真っ赤になり俺の胸元に抱きつき、顔を隠している。今日の彼女は昨日とは別人のように恥ずかしがり屋だ。
「部屋の温泉入ろう?ごめんね、俺も昨日そのまま寝ちゃったから」
そう言って彼女の体にシーツを巻いたまま、風呂場に向かう。そのまま、まだボーッとしている彼女を泡だらけにして隅々まで体を洗ってあげ、湯船に浸からせる。
もう一度……という気持ちがないわけではなかったが、流石にだめだと自重する。
風呂から上がり今日はもう二人でゆっくりしようということになり、帰る夕方の時間まで海を眺めながらお茶をしたりしながらホテルでまったりと仲良く過ごし幸せだった。
「楽しかったですね」
「ああ、良い旅だった。また行こう」
「はい」
仲睦まじく家に帰ってきた俺たちをみて、ジャンとライラは「二人で無事帰ってきましたね」「仲が深まったようでよかったです」と俺に向かってニヤリと笑った。
彼等には喧嘩しかけたことは秘密にし「当然だ。俺の言った通り温泉にしてよかったよ」と強がっておいたことはミミには内緒だ。
結果的には俺は彼女と一緒に温泉にも入れて、お互い愛の愛も再確認し、最高な新婚旅行になり幸せでいっぱいだった。
二人の新婚旅行はこれで終わりです。読んでいただきありがとうございました。