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新婚旅行①

結婚直後の新婚旅行の話です。

 私の目の前に広がる真っ青な海。そしてその手前には温泉が見えており、ここから見ると空と海と温泉がひとつになっているように見えて幻想的だ。


「うわぁ……美しいですね」


「気に入ってくれた?」


「もちろん!こんな素敵な場所があったなんて。しかも貸切ですか?」


「ああ。今日はここは私達しか泊まらないから安心して」


 彼はニコニコと嬉しそうにそう言った。安心とはなんの安心なのかが少し気にかかる。


「部屋にも露天風呂があるよ」


「じゃあ何回も入らないと勿体ないですね」


 私のその発言にデーヴィは頬を染めながら「そうだな」と呟いた。私は何か変なことを言ったのだろうか?ときょとんと首を傾げる。そんな私の耳元に彼は口を寄せてきた。


「二人で()()に何回も入ろうね」


 私は自分の発言の意味に気が付き、ブワッと頬が染まる。


「そ、そういうはしたない意味で言ったのではないです」


「積極的な奥さんも好きだよ。夜が楽しみだなぁ……あ!今日は俺がミミを洗ってあげるからね」


 彼はそんな爆弾発言をして、にんまりと笑っている。これから私はどうなるのだろうか。


「楽しみは先にとっておくとして、もし疲れていなければ少し街を歩こうか?」


「疲れていません。是非行きたいです!」


 彼は私の手を握り、一緒に街を降りていく。私達は忙しく普通のデートをあまりしたことがないので、外で手を繋ぐだけでドキドキしてしまう。


「港町だから海鮮が美味いらしい。ランチはシーフードレストランに行こう」


「いいですね」


 彼に海が見える素敵なレストランにエスコートされ、海鮮サラダやアクアパッツァなどテーブルに美味しそうな料理が次々運ばれてくる。


「んんーっ、美味しいです」

「確かにこれは美味いな」

「幸せですね」

「それは良かった。俺は君の手料理以上に美味しいものはないけどね」


 私は彼のその発言に頬が熱くなる。嬉しいが恥ずかしい。プロの料理の方が美味しいに決まっている。


「ありがとうございます。で、でも私のは家庭料理ですから」


「ああ、そうだね。君の料理は毎日でも食べたい幸せの味だ。大好きだよ」


 彼は微笑みながらサラッとそう言われ、私は本格的に照れてしまった。


「ふふ、照れてるミミも可愛い」


 デーヴィは結婚してからさらに私への愛を隠さなくなった。彼に溺愛されている自覚はあるが、私はまだ慣れないのですぐに恥ずかしくなる。


 二人でレストランでの食事を終え、街中をブラブラする。


「わぁ……さすが海の街です。王都とは全然ちがいますね!みなさんのお洋服もリゾートっぽいですし、アクセサリーも貝殻とか真珠なんですね」


 そう言った私を彼はじっと見つめ、何か閃いたような顔をして悪戯っぽく笑った。


「郷に入っては郷に従え」


「え?」


「よし!この街に似合うように着替えようじゃないか」


 そう言って高そうな洋服店に彼に手を引かれ入って行く。そこで、彼に勧められるままあれでもない、これでもないと何着も服を試着し「これだ!」とエメラルドグリーンの美しいキャミソールワンピースに着替えさせられた。

 いつの間にかワンピースに合わせた翡翠と貝殻のネックレスも首からかけられ、彼は満足げに頷いている。


「似合うよ。とても綺麗だ」


「あ……あの」


 これは……いくらするのだろうか。怖くて値段が聞けないわ。


「よし、そのまま出かけよう」


 その後彼は自分がさっと選んだ店のシャツに素早く着替え、支払いを済まし店員に街の有名な宝飾店の情報を聞き出していた。


 私たちが着ていた服は従者に預けて、さあ行こうと彼はご機嫌に店を出た。そして、教えてもらった宝飾店に引きづられて連れて行かれる。


 カランカラン


 ここの店はレトロな雰囲気でアンティークなショーケースに美しい宝石が並んでいる。


「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか」


 にこやかで優しい雰囲気の紳士な店員さんが話しかけてくれる。


「ここに新婚旅行で来てるんだ。彼女に何か記念になるものがないかなと」


「そうでございましたか、それは素晴らしい。ご結婚おめでとうございます」


 店員さんは笑顔でショールームの鍵を開け、宝石を次々と並べていく。


「この街では真珠は『人魚の涙』と言い愛の象徴とされています。今のお二人にぴったりかと」


「いいね」


 彼は並んだ宝石を嬉しそうに眺めている。こうなったら彼はきっともう買うつもりだ。


「涙なのにどうして愛の象徴なんですか?」


 私は単純な疑問を口にする。


「人魚が愛する人を想って泣いた涙が波に落ちて真珠になったという言い伝えですよ」


「そ、そうですか」


「俺は君を泣かす気はないけど、愛の象徴ってところは気に入った」


 デーヴィは私の頬にちゅっとキスをした。ひ、人前で何てことを……私の顔が真っ赤に染まり俯く。


 店員さんは優しい微笑みでこちらを見ていた。

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