95 結婚式
月日は過ぎ、今日はついに結婚式当日。私は朝からドレスを着て化粧をしてヘアセットをして大忙しだ。
「お嬢様……っ。とてもお美しいです」
ユリアは涙を目に溜めて褒めてくれる。
「ええ、我が娘ながらとっても素敵だわ。結婚おめでとう。幸せになりなさい」
「ミシェル、君はまるで女神のようだ。君は美しくて可愛い私の自慢の娘だよ。どうか幸せになるんだよ」
「ミシェル、おめでとう。綺麗だな。団長と仲良くしろよ」
家族がみんな嬉しそうに喜んでくれている。お父様は「あいつが嫌になったら、すぐに戻って来なさい」とうっ、うっと泣き出したので困ったが、その光景すらも幸せだ。
家族が部屋を出てすぐ、アンヌが顔を出してくれた。
「シェルーっ!綺麗!素敵ね」
「ありがとう」
「とっても似合ってるわ。おめでとう、幸せにね」
「ええ、アンヌの式も楽しみにしているわ」
私達の結婚式がものすごく早かったため、正式に婚約期間を取っているアンヌの式は二ヶ月後だ。
「楽しみにしてて。でも今は貴方の式だわ!綺麗な花嫁さん、こけないようにね」
ふふっと彼女は笑った。「酷いっ!こけません」とベーッと舌を出した。アンヌと話していると緊張がほぐれてくる。彼女は、ではまた後でと手を振り式場へ戻って行った。
トントントン
「旦那様のご準備ができました」
「どうぞ」
部屋に入ってきたデーヴィ様は、とっても色っぽく髪をかきあげ、豪華な刺繍が入った華やかな黒い燕尾服を見事に着こなしていた。
(ふぁあ……格好いいわ)
私は彼に見惚れていたが、すぐに我にかえり「デーヴィ様とっても素敵です」とちゃんとお伝えした。
あれ……?彼はぼーっと私を眺めたまま、何も言ってくれない。もしかしてこのドレス気に入らなかった?
「美しい……この世のものとは思えないほど美しい。本当に天使がいるのかと思った」
彼は私に近付き「俺の妻になってくれてありがとう」と、そっと左手を取ってキスをした。
「ありがとうございます」
あまりの賞賛に恥ずかしくなり、柔らかく微笑んだ。
「どうしよう……美しい君をみんなに見せたいけど、見せたくない!!」
そんな困った事を言っていたが「旦那様、もうお時間です」と無理矢理従者に連れて行かれた。
♢♢♢
教会の扉が開き、お父様からデーヴィ様へエスコートが変わる。
お父様が笑顔で「幸せに」と小さな声で言ったのが聞こえ泣きそうになる。デーヴィ様はそれに気が付き私に微笑み、腕に手をそっと重ねてくれた。
新郎デーヴィド・フォン・メクレンブルグ、貴方はここにいるミシェルを病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も妻として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?
「誓います」
新婦ミシェル・ド・ロレーヌ、貴方はここにいるデーヴィドを病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?
「誓います」
お互いの声が心地よく教会に響く。今日、本当に彼の妻になるんだと胸がじんとする。
「誓いのキスを」
デーヴィ様は私のヴェールをそっと上げ、私を見つめる。
「世界で一番愛してるよ」
そう言ってそっと口付けをし、すぐに体が離れた。
わぁーーっと割れんばかりの祝福の拍手がなる。私は幸せで、嬉しくて満面の笑みで彼と共に式場を歩く。
フラワーシャワーを浴びながら、家族や友人、隊員のみんなから「おめでとう」「綺麗だよ」「お幸せに」と声がかかる。
とてもとても幸せな結婚式ができた。