【デーヴィド視点】秘密
「団長、酒で勝負しましょうよ」
「受けて立つ!」
机に酒瓶を並べて俺とヘンリーは飲み比べ勝負をし始めた。
「おー!やれやれ!」
「この二人が酒で潰れてるの見たことねぇ」
隊員達はわいわいと盛り上がっている。
「飲むだけじゃつまらないから、何か賭けましょうよ?」
「構わんが……」
「じゃあ、負けた方は秘密を一つ言うってことにしましょう!」
「秘密?」
「知られたくないこと一つや二つあるでしょ?」
「いいだろう!」
「じゃあ決まり。団長、男に二言はないですからね」
ニコラは冷たい眼差しで二人を見ながら、俺の背中をバシっと叩いた。
「デイヴ、悪いことは言わないからやめとけ。ヘンリーはお前よりずる賢い。おそらく何か狙いがあるはずだ」
ヘンリーはニヤリと意地悪く笑っている。
「もう!副団長、俺をそんなに褒めないでくださいよ」
「褒めてない。でも……お前は味方なら心強いが、敵だとやっかいなのは本当だ」
「ニコラは心配しすぎだ。勝てばいいんだろ!お前、俺の酒の強さ知ってるだろ」
「まぁ、そうだが……」
そして、そのまま二時間、三時間と飲み続け周りの隊員達はほとんどもう酔い潰れて寝ていたが――ヘンリーはまだ飲んでいる。
「俺、ミシェルちゃんのこと好きすぎるんですよね……」
「わかる……俺も好きすぎて困る」
「性格もいいし、料理上手いし、反応可愛いし、俺が辛い時に欲しい言葉をすぐくれるんですよね」
「そうだよなぁ。俺もミミに何度も救われたか……」
「ミミって呼び方甘いっすよね」
「いいだろ?お前は絶対呼ぶなよ」
「けち……」
二人でミミの話をしつつ、酒を煽る。流石にこれだけ飲んだら酔ってきた。ヘンリーもだいぶ眠たそうだ。
その時、今出てるのでもう店の酒が全部なくなりましたと居酒屋のマスターから声がかかる。
「わかった。おい……ヘンリーお前どんだけ飲むんだよ」
「こっちの台詞ですよ。こんなに飲んだの生まれて初めてっす……」
「遅くまでご迷惑をおかけして申し訳ない。もう終わらせて解散させますので。迷惑料は上乗せで支払いますので許してくださいね」
ニコラは爽やかに店主に話をしている。本当はこいつが一番酒強いのかも……俺は意識が朦朧としながら、テーブルに余ってる酒を飲む。
「あーもう飲めねぇ……」
「じゃあお前の負けだ、約束だから秘密を話せ」
そう言った途端、ヘンリーは待ってました!というようにニーっと笑った。……なんか嫌な予感が。
そもそもこいつが秘密を言う側なのに何故嬉しそうなのか疑問だ。
「じゃあ、俺のとっておきの秘密を教えてあげますね」
ヘンリーはこそっと俺に耳打ちした。
「秘密にしてましたけど、ミシェルちゃんのファーストキスの相手は俺です」
は……?
………こいつ………今、なんて言った?
俺は混乱と動揺で声が出ない……
「お前……笑えない冗談やめろ。どうせ嘘だろ」
「本当ですよ。彼女の唇とっても甘くて柔らかかったです。なんならミシェルちゃんに確認して下さい」
「……お前、殺す!」俺はヘンリーの胸ぐらを掴んだ。
「はは、最後にその焦った顔が見たかったんっすよね……やられっぱなしで終わるなんて俺らしくないし……ああ、だめだ。本気で眠たくなってき……た」
ヘンリーは爆弾発言を残してぐうぐう寝始めた。
「おい!ふざけんなよ!寝るな」
あんなに酔っていた俺は一瞬で酒が醒めた。
「くっくっく、ヘンリーにしてやられたな。最初からわざと自分が負けて、これを言うつもりだったに決まってる」
「……ショックだ。俺とが初めてと思ってた」
「心が狭ぇんだよ。お前だって初めてじゃねぇだろ。お互い様」
ニコルは残念だったなと楽しそうに笑っていた。