表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/139

【デーヴィド視点】酒癖

 きっちり十五分……あ、もう数秒過ぎている。時計を睨みつける俺をニコラは笑っている。


「迎えに行くなんて格好悪いことしないで下さいよ。あいつなら帰ってきます」


「わかってるよ。自分の部下は信じてる」


 俺は何本目かわからないまた煙草に火をつける。そうして、約束から十分ほど時間が過ぎた頃彼女を横抱きにしたヘンリーが戻ってきた。


 俺は吸いかけの煙草を灰皿に強く押し付け、ヘンリーに近付いた。


「お前は時間厳守という言葉を知らんのか。それとも一から教育が必要か?」


 俺は嫌味を言いながら「離せ」と彼女を自分の腕の中に抱え直した。ギュッと俺の服を握る彼女の様子にほっと安心する。


「送別の祝いとして勝手に十分ほど追加でもらいました」


「祝いはこっちからやる、って言って初めて貰えるもんなんだよ」


「けちですね。寝込みを襲わず、真面目に帰ってきた俺にお礼を言って欲しいくらいですよ。可愛すぎて宿に連れ込みたかったのを我慢したんですから」


「――っ!ふざけんな!何もしないのが当たり前だろうが!」


 俺は大きな声で怒鳴る。その声でミミの瞼がゆっくりと開いた。まずい、起こしてしまった。


「すまない、ミミ……起こしたね。眠たかったらこのまま寝てていいよ」


 俺は彼女を覗き込み、甘い声で話しかける。


「うわぁ……団長の声が甘すぎて胸焼けするな」

「普段とキャラが違いすぎる」


 隊員達は俺の様子を見て驚いているが……俺はミミの前ではいつもこんな感じだから気にしない。


「デーヴィ様大きな声出しちゃ、めっ!です」


 彼女は俺を見てめっ!と怒った後、ふにゃあと笑って、俺の胸にすりすりと頭を擦り付ける。


 ドキドキドキ


 ゔーん……可愛さの破壊力がすごい。彼女の酔った姿はかなり心臓に悪いのだ。


「ミシェルちゃんの酔った姿すごいな」

「可愛すぎて危険だな」


 その後、ミミはキョロキョロと何かを探すように視線を彷徨わせヘンリーと目が合った。


「ヘンリーさんいたぁ……よかったぁ」


 彼女はそう言ってふんわりと笑った。そして、俺の腕に収まったまま手をぐっと伸ばし、ヘンリーの服を掴む。


「本当に……行っちゃうの?私……ひっ……うっ……さみ……寂しいよぉ」


 あいつの服を掴んだまま、ミミはしくしく泣き出した。ヘンリーは耳まで真っ赤に染めて固まっている。


「団長……俺、行くのやめようかな」


 ヘンリーはミミの泣き顔を見て、そんなとんでもないこと呟いた。


「ふざけんな。決定事項だ、絶対に行け」


「じゃあ、こんなに寂しがってるし一緒に北に連れてってもいいっすか?」


「いいわけねぇだろ!大丈夫だ、気にするな。これは酔っ払いの戯言だ」


 ミミはさっきまで泣いてたのに、今はふふふと楽しそうに笑っている。本当に酒癖が悪すぎる。しかも俺の前で別の男がいなくなって寂しいなど……許せない。


「ミミは寂しくなんてないだろ?俺がずっと傍にいるんだから」


 その言葉にミミは嬉しそうな顔をして、俺の首に手を巻きつけ「ふふ、大好き!嬉しい……一生一緒にいてね」と呟いてまた寝始めた。


 恐らく俺の顔も真っ赤に染まってると思う。なんとも言えない甘ったるい雰囲気が流れる。


「はい!もう問題児の妹は俺が責任持って連れて帰りますから。送別会続きしてください」


 ルーカスはそう言い場の空気を変える。俺がこのまま送ると言ったが「今日のこいつの世話は兄の仕事です。恐らく……これ見せたら父上に怒られるし」と苦笑いをしてミミを背負った。


「ヘンリーさん、兄妹ともにお世話になりました。向こうでのご活躍祈ってます」


「ああ、ありがとう。ルーカスも元気で。ミシェルちゃんのことよろしく」


「ええ。そう言えば、妹が保存食作ってたんで荷物になるでしょうがこれ持って帰ってください」


「嬉しいよ」


 そう言ってルーカスとミミは家に戻って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ